第16章 前夜は月夜の図書室で
厩舎を出ると、ちょうど飼い葉を配ろうと入ってくるヘングストたちと出くわした。
「おや、お目覚めかの?」
「はい、すっかり寝てしまいました。……あっ、寝てるとこ見られちゃったんですね。恥ずかしい…」
顔を赤くするマヤに、ヘングストが慌てて訂正しようとする。
「いや、わしじゃなくてリ…」
「マヤ~!!!」
ヘングストの声はマヤを呼ぶ大きな声にかき消されてしまった。
「ハンジさん!」
離れたところに立っている人影は、ハンジとモブリット。
「ちょうど良かった。こっちこっち!」
大きく手招きしているハンジの様子にマヤは慌てて、
「ヘングストさん、サムさん、フィルさん! 失礼します!」
と頭を下げると、ハンジとモブリットの方へ走っていった。
「……行っちゃったな」
「みんなそうだけど、あの子も無事に帰ってきてほしいよな」
「あぁ、そうだな」
ぼそぼそと話しているサムとフィルの尻をピッチフォークで叩くと、ヘングストは怒鳴った。
「みんな、無事に帰ってくるに決まっとる! さぁ無駄口叩かんと早ぅ仕事せんかい!」
「「へい!」」
三人は厩舎に入っていった。
「ハンジさん、モブリットさん!」
走って二人が立っている岐路へ到着した。
そこは兵団一般棟から厩舎へつづく道の上。一般棟から見てまっすぐ行けば厩舎へ、左に曲がれば格納庫がある。格納庫とは主に荷馬車を保管している特別倉庫だ。
「マヤ、モブリットと格納庫へ行くところなんだ。君に見てもらいたいものがある。一緒に来てくれるね?」
「はい」
マヤの返事を聞くと、にっと笑う。
「よし、では行こう!」