第15章 壁外調査までのいろいろ
巨人のことになると見境がなくなるいつもの癖で、ハンジが先ほどから大声でまくし立てている。
我慢強く聞いていたリヴァイは、ハンジの口から熱心な志願者の名前が飛び出した途端に自身の胸がずきんと疼くのを感じた。
……マヤが、巨人捕獲班に志願した… だと?
ミケ班から二名の臨時編入と聞き、嫌な予感はしていたが。
ミケ班にはマヤ以外にも多くの兵士がいる。それなのにミケ班と聞いて、真っ先にマヤの顔が浮かんだ。
いや、ありえないだろう。
今まで捕獲班にわざわざ志願した者などいないし、この先も現れないはずだ。ハンジの酔狂につきあえるのは、モブリットくらいのものだ。
たった二人ではさすがに巨人の生け捕りなる危険な任務を遂行できず、これまでに編成された捕獲班の班員はすべて、ハンジ班の中から選抜されてきた。
それなのに何故、今回に限って他から…?
もしかしたら気立てがよさそうなマヤがハンジの押しの強さに負けて渋々承諾したのを、ハンジは勝手にマヤ自ら志願したなどと、ほざいているのだろう。
……大いにありえる。
だがミケは…?
ミケが率先して生け捕りに加担するなど考えられない。
考えられるとしたら…、ミケが捕獲班に加入する理由はただひとつ。
恐らく、マヤ。
……チッ、胸糞悪ぃ。
あのとき、あの調整日…。執務室の窓から見た、馬を駆るマヤを追うようにして出ていったミケの姿が思い出される。
訳もわからず苛立ちを覚えたあの日。
また自分では掴むことのできないどす黒い何かが、胸を巣食う。
リヴァイが自身の胸のうちに吹き荒れる何かに戸惑い、我知らずこぶしをぐっと握ったそのとき、ハンジの声が降ってきた。
「リヴァイも捕獲班に入らないかい?」