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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第15章 壁外調査までのいろいろ


「……それは、あたしとはもう寝ないってことかしら」

「そうだ」

その答えに意外そうに眉を高々と上げた。

「なんの約束もない関係だから、気軽なものだと思ってたけど。オンナでもできたのかしら?」

「……いや」

そんなんじゃねぇ。

そんなんじゃねぇが、頭に響いてくるのは、ひとりの女の涙声。

……兵長は… “女なんて抱きたいときに抱ければいい” って思ってるんですよね?…。

浮かぶのは紅潮した頬で見上げてくる、ひとりの女の涙顔。

あのときからずっと、あの顔と声に囚われつづけている。

何ひとつ… わからない。

自分が何をしたいのか。どうすればマヤの顔が浮かばなくなるのか。声が聞こえなくなるのか。

何ひとつ…。

眉間に皺を寄せて黙っているリヴァイをじっと見つめていたマチルドは、淋しそうに笑った。

「もうここには来ないつもりね?」

その声にはっとして何か言おうとした薄いくちびるがひらく前に、覆いかぶせるようにマチルドはつづける。

「いいえ違うわ、来ちゃダメね。何があったか知らないけど」

店内の隅に立てかけてある箒を手に取り、

「……店の片づけをするから帰ってくれる?」

これ見よがしに床を掃き始めた。

「……世話になったな」

そうつぶやき出ていった小柄な男の背中を窓から見送っていたマチルドは、ため息をついた。

「はぁ…。ちょっといい男だったのに残念」



床屋を出て街の広場まで来たリヴァイは、各方角に放射状に伸びる道を前にして立ち止まった。

いつもなら髪を切ったあとは、湯あみも兼ねて娼館へ行くことが多い。

街はずれにひっそりと建つ娼館へつづく道をしばらく眺めていたが、くるりときびすを返して正反対にある兵舎へ帰る道を選んだ。


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