第3章 調査兵団
調査兵団入団式の日。
東方、西方、南方、北方… 四つの訓練兵団から調査兵団に入団した者は、合計112名だ。
皆、使命感に燃えた良い顔を壇上のエルヴィン団長に向け、すっくと立っていた。
「今ここにいる君たちは、我々と同じ人類の自由のために心臓を捧げた調査兵団の兵士だ。ともに戦うことを誇りに思う」
エルヴィン団長の隣で、リヴァイ兵士長はまた興味がなさそうな様子で腕を組んで立っていた。
「……以上だ。このあとは各人、居室の割り当て表を見て各居室で夕刻まで待機。その後食堂にて新兵歓迎会を催す。解散!」
……今日もリヴァイ兵士長は、つまらなさそうにしていたな…。
そうマヤが思っていると、マリウスが声をかけてきた。
「マヤ、部屋割りだってさ! 行こうぜ」
「行こうぜって…、男子と女子は別々なのよ」
「そんなことはわかってるよ」
女子の居室棟の前でマリウスと別れ、マヤは壁に張り出されている居室の割り当て表の前に行く。
……えっと… マヤ・ウィンディッシュ… あった、一階の一番奥だ…。
指定された部屋に行くと、扉が半開きになっていた。
部屋には赤毛の髪の娘が窓際に立っていたが、振り向きざまにニコッと笑った。
「マヤ? 私はクレア。よろしくね」
その太陽のような笑顔にまぶしさを感じながら、マヤは微笑み返した。
「マヤです。こちらこそよろしくね」
女性兵士は男性兵士に比べ人数が少ないので、部屋は二人部屋だった。男性新兵は四人部屋だ。
「どっちのベッドがいいか訊こうと思って、待ってたんだ」
明るく笑うクレアの様子に、友達になれそうだとマヤは安心した。
クレアは、東方訓練兵団出身だった。
新兵歓迎会まで待機ということでクレアと部屋で自己紹介から始めて親交を深めていると、コンコンと扉がノックされた。
ひょこっと顔を覗かせたのは、薄い茶色の髪の可愛らしい娘だった。
「クレア!」「ペトラ!」
隣の部屋に割り当てられたペトラは、クレアと同じ東方訓練兵団出身で二人は仲良しらしい。
ペトラは同室になった南方訓練兵団出身のアンネを連れて、遊びにきたのだ。
こうして年頃の娘が四人も集まれば、あっという間に気心が知れおしゃべりに花が咲いた。