第15章 壁外調査までのいろいろ
あっと言ったきり困った様子で黙ってしまったマヤに、ペトラは不審そうな目を向けた。
「マヤ、説明下手すぎ! 何がどうなって兵長に怒られることになるのよ…」
「そうだね、ごめん…」
顔の前で両手を合わせて謝ると、きちんと説明しようと言葉を選び始めた。
「二日酔いで体調が悪かったから、分隊長が嗅いできたのよ」
「……ん? どういうこと?」
「私も知らなかったんだけど、嗅いだらどこが具合が悪いのかわかるみたいで…」
「………」
ペトラは “そんな話は聞いたことがない” と思ったが、あの変人嗅ぎ癖のミケ分隊長なら、あながち嘘でもないかも… と考え直した。
「でね、嗅がれているときにちょうど兵長が部屋に入ってきたの。それから見事に私の体調不良の症状を言い当てた分隊長は、兵長に私を部屋に送っていくように頼んだんだ」
「……なるほど」
「でね、送ってもらったときに兵長が “いつもああやって嗅がれているのか? 男に隙を見せるな” ってなんだか怒ってるみたいな感じで言ってきて…」
「……うん」
「それでそのときに… ペトラの言ってた兵長のあの言葉が浮かんじゃって…。ああいう風に考えてる人に色々言われたくないなって思って。だからつい訊いちゃったの、“女なんて抱きたいときに抱ければいい” って思ってるんですよね?って。ごめん…」
マヤは申し訳なさそうに頭を下げた。
「別にいいよ、口止めしてた訳じゃないし。私から聞いたって言ったんじゃないよね?」
「うん」
「あ、でも言わなくても私経由でマヤにいった話だってバレバレか…。じゃあ私があのとき、聞いちゃってたってのもバレてることになるね、あはは…」
自虐的に笑うペトラに、再び謝った。
「本当にごめん…」