第15章 壁外調査までのいろいろ
「えっと… 何から話せばいいかな…」
マヤは少し迷っていたが、どこから話を始めるか心を決めた。
「そのペトラの酔っちゃった日のあとからね、リヴァイ兵長が休憩時間に来なくなったの」
「うん」
「もちろん偶然というか、たまたまというか… 来ないときだってあるとは思うんだけどね。その… ペトラから兵長の言葉を聞いたあとだったし、何か関係あるのかな? とか思ったり…」
「そうだね… それはちょっと気になるよね」
「うん…。それから気のせいかもしれないんだけど、兵長に避けられてるような…」
ペトラの眉間に皺が寄る。
「ちょっと待って。なんでマヤが避けられるの?」
「……そうよね。やっぱり思い過ごしなのかな…」
マヤの脳裏には廊下でくるりときびすを返した背中が浮かんでいた。
「それで飲み会で席が隣になったから、どうして来なくなったのか訊こうとしたんだけど、酔っちゃって訊けなくて…」
「隣だったの? 兵長と?」
「そう。でもしゃべってないよ、全然。でね、次の日二日酔いでミケ分隊長が休んでいいって言ってくれて、兵長が部屋まで送ってくれたんだけど…」
「送ってもらった? 部屋まで? 兵長に?」
ペトラの疑わしそうな声が響く。
「全然避けられてなんかないじゃん」
「あっ ごめん、説明が下手で。そのときに兵長がたまたまいて、なんかそういうことになっちゃって…」
「ふぅん…」
「で…!」
マヤは次の言葉こそが、ペトラに謝らなくちゃと思っていたことだったので自然と声に力がこもった。
「兵長に、分隊長は男なんだから隙を見せるなと怒られて… あっ…」
……そうだ、分隊長の恋のことは言っちゃいけない…。
マヤはそう気づいたがすぐに、すでにあのとき兵長に “分隊長は好きな人がいる” と口走ったことにも気づいた。
……どうしよう…!