第15章 壁外調査までのいろいろ
夕食も入浴も終え部屋に帰ってきたマヤは、一息つくとよしっと立ち上がった。手にはエルヴィン団長からもらった巾着袋。
部屋を出ようと扉のドアノブに手をかけた瞬間、ノックの音が響いた。
開けた扉の先には、えへへと友が笑顔で立っていた。
「ペトラ! 私も今行こうとしてたの」
「そうなんだ、気が合うじゃない!」
そのまま部屋に入ってきていつもの場所に腰をかける。
「うん、ほら見て。団長にもらったクッキー、一緒に食べようかと思って」
「うわ~、可愛い袋だね」
「うん」
マヤは巾着袋を机の上に置くと、
「ちょっと待ってて。紅茶を淹れてくるから」
と言い残し、部屋を出ていった。
ひとり残されたペトラは巾着袋の愛らしい桃色のリボンを見ながら、思わず心の声が口をついて出た。
「団長の王都のお菓子かぁ…。飲み会や捕獲班のこともあるし… 訊きたいことがありすぎるわ…」
マヤが紅茶を淹れて戻ってきたころには、ペトラの頭の中では “マヤに訊きたいことリスト” ができあがっていた。
「はい、どうぞ」
紅茶のカップを渡されたペトラは、すぐにでも質問攻めにしたい気持ちを抑えてその素晴らしく優雅な香りを楽しんだ。
「いい香りね」
「美味しいクッキーだから、茶葉もちょっといいのを選んでみたの」
嬉しそうに微笑みながらマヤもベッドに腰かけ、立ち昇る湯気の香りに顔をうずめた。
満足そうにひとりうなずくと早速巾着袋のリボンをほどき、小皿にクッキーをならべる。
「可愛い! 星の形だ」
「そうなの。……はい、どうぞ」
目の前に差し出された小皿からクッキーをつまんで、ぽいと口に放りこんだペトラはすぐに目を丸くした。
「うわ、さすが王都! 美味しい!」