第15章 壁外調査までのいろいろ
「街の菓子屋のものとは香りが違う」
「さすが分隊長ですね」
「……まぁな」
「………!」
スンと鼻を蠢かせるミケを、マヤは不覚にも可愛いと思う。
……私ったら、分隊長のことを可愛いだなんて…!
上司であり年長の男性を “可愛い” と一瞬とはいえ感じてしまったことに軽い罪悪感のようなものを覚え、何か他に話題はないかと頭を巡らせた。
「あ! そうだ分隊長、ご報告が遅れました」
「なんだ」
「エルヴィン団長に先ほど、今度の壁外調査でハンジ分隊長が率いる巨人捕獲班に編入するように任命されました」
「あぁ…。エルヴィンから聞いているが。……大丈夫なのか?」
「はい?」
「モブリット以外で自ら協力を申し出る者などいる訳がないからな…。おおかたハンジに脅迫でもされたのではないかと心配している」
ミケの言葉にマヤは目を見開くと笑い出した。
「ふふ、分隊長も団長と同じことを言うんですね」
「エルヴィンも同じことを?」
「はい。弱みを握られたのか?って。でも中途半端な覚悟じゃ務まらないとも。確かに…」
笑顔からすっと真剣なまなざしで、ミケを見つめながら。
「ハンジさんから出されたある条件で捕獲班の編入とはなりましたけど、きっかけはどうであれ真剣に取り組みたいです」
「……そうか」
「ええ。ハンジさんの言うように巨人を知ることが近道だと私も思うので…」
「そうだな…。まだ正式なメンバーは決まっていないが、できる限り俺が入れるようにしよう」
「え?」
思いがけない話に驚き、マヤの声はうわずってしまった。
「捕獲は想像以上に危険が伴う。大事な部下を失う訳にはいかないからな」