第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
リヴァイとマヤの会話に、カズオが興味津々で加わった。
「……もしかしてひと口飲んだだけで、使われている茶葉がおわかりに…?」
「当たっているかどうかはわからねぇが、俺たちが思っている茶葉は…」
リヴァイがマヤの瞳を覗きこむと、せえの!と掛け声などなくとも二人の息はぴったりで声が合わさる。
「ニルギリだ」「ニルギリです」
「おやまぁ!」
すっとんきょうな声を上げたのはタキゾノだ。
「よくぞ当てられましたなぁ!」
問いかけたカズオはリヴァイとマヤの見事な大正解に、丸まった背中がぴんとまっすぐに伸びるくらいに驚いている。
「ダージリンやアールグレイをブレンドしたこともあるのですが、椿の香りや甘味が遠くに行ってしまう感じがしましてなぁ。知り合いに紅茶に詳しい者がおりまして、ニルギリだったら椿の良さを生かせると言うものですから」
タキゾノはリヴァイとマヤの顔を交互に見てから、つけ加えた。
「お二人もお詳しいですなぁ」
「詳しいというよりは…」
リヴァイの言葉を当たり前のようにマヤが引き継ぐ。
「好きなだけです、紅茶が何よりも」
またもや息がぴったりの二人を微笑ましく思うタキゾノとカズオは。
「「ほんにお似合いですなぁ」」
「そういうお二人も息ぴったりですよ」
マヤが微笑み返した。
「わはは、これはやられましたなぁ」
カズオが大笑いして和やかにウェルカムドリンク… おもてなしのお茶の時間は過ぎていった。
椿茶がもうあとひと口でなくなるころになって、マヤは今いるロビーを見渡した。
着席してから女将タキゾノとカズオとのおしゃべりに、そして椿茶を堪能するのに夢中になっていたので、ゆっくりと見る暇もなかったのだ。
腰をかけているソファとテーブルと飾り棚だけでいっぱいになっている小さな空間だが、壁は砂色で落ち着いた雰囲気を醸し出している。
そしてリヴァイとマヤたちの正面に飾ってあるものに、惹きつけられた。
……あれは絵なのかしら…?