第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
一羽の白い鳥が羽を広げて夕陽に向かって飛んでいる絵だとばかり思っていたのに、よく見れば二羽が絡み合うようにして飛んでいるように見える。
「あれ、でも羽は一羽分しかない…?」
ますますマヤは首をかしげるばかり。
「……一体どうなっているんだ…」
リヴァイも解せぬと低い声でつぶやいている。
そんな二人の様子に、タキゾノとカズオはうふふと嬉しそうに微笑み合っている。
「これは “比翼の鳥” でございます」
「「比翼の鳥…?」」
リヴァイの低い声と、マヤの少し高めの涼やかな声が、聴き心地の良いハーモニーを奏でるようにロビーに響く。
「比翼の鳥とは、それぞれひとつの翼とひとつの瞳を持つ東洋の伝説上の鳥のつがいでございます」
「……ひとつの翼とひとつの瞳…」
マヤはタキゾノの言葉を無意識のうちに繰り返しながら、掛軸の中を飛ぶ比翼の鳥を見つめる。
その正体がわかって見てみれば、確かに一羽ではなく二羽の鳥が絡み合うように支え合って一体となって飛んでいる。
「東洋にはこのような言い伝えがあるそうです。“南方に比翼の鳥あり、飛び止まり、飲み啄むも、互いに分かれ離れない。この鳥は宿命を通じ、死して再び生まれ、必ず一つの場所にいる” と。わたくしはこの比翼の鳥の姿に感銘を受けましてなぁ…」
掛軸に手を伸ばし、今にも比翼の鳥を抱きしめてしまいそうな熱のこもった声で、タキゾノは話しつづける。
「宿命の相手と骨の髄まで愛し合っても、やがて命は尽きるものでございます。けれども愛おしい人を想う心は決して尽きることはありません。必ずや再び生まれつき、めぐり逢い、愛し合うのでございますなぁ」
タキゾノを今も若いころと同じく、そしてこの先も生まれ変わってもずっと愛し抜くと心に決めているカズオが、話を締めくくった。
「身は限りあり、恋は尽きせず。これ以上のことはありませんなぁ」
その印象的なフレーズを聞いて、リヴァイとマヤは自然と視線を絡め合う。
「身は限りあり…」
と、リヴァイがつぶやけば、
「恋は尽きせず…」
と、マヤが想いをこめて。