第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
リヴァイとの温泉旅行を翌日に控えた早朝の、立体機動訓練の森の樹の上。
枝についた雫が朝日で輝き、吐く息が白い。
夏にはにぎやかな小鳥たちのさえずりも冬は静かで、冷えた空気は張りつめている。
その凜とした森の雰囲気を全身に感じながら、マヤは大きく深呼吸する。
「ふぅ…」
するとつられて一緒に息を吸いこんだのは、隣に立つオルオ。
「ふぅぅ~、寒ぅ~」
情けない声で震える仕草をしているオルオをマヤは笑った。
「もう、こっちまで寒くなってくるじゃない」
「冬の自主訓練はきついもんがあるよな。ペトラみたいに布団の中にいるのが正解かも」
「私は好きだけどなぁ、この冷えた風が頬を撫でる感じ。気持ちが引き締まるわ」
「そりゃマヤは風そのものみたいなもんだから、寒くても関係ないかもしれねぇけどよ…」
オルオはぶるると肩を震わせてから。
「久しぶりだよな、一緒に飛ぶの」
「そうね」
「俺さ…、もうマヤと飛ばない方がいいのかなって思ってる」
思いがけないことを言い出すオルオの顔を思わず見た。
「どうしたの、急に」
「だってよ、兵長に立体機動装置の使用許可申請書を出すたんびにすんげぇ睨まれるんだぜ?」
「睨む? そんなことないよ、勘違いじゃない?」
「いやいや、あれは絶対俺がマヤと二人で訓練してんのが気に入らない顔」
「そうかなぁ…。昨日私が “明日オルオと早朝訓練します” って言ったときは全然気にしてない感じだったよ?」
「マヤの前ではかっこつけてんじゃね? 嫉妬してるとこを見せないように」
「え~、兵長に限ってそんなことないって」
「いいや! 俺さ、最近思うんだ。兵長も人間だったんだな、ただの男だったんだなって」
「どうしてそう思うの?」
「マヤとつきあうようになってから兵長は嫉妬で機嫌が悪かったり、マヤと逢う前は嬉しそうだし、すげぇわかりやすくなった。ここ最近は、ずっと忙しそうなのに機嫌がいい。明日から行く一泊旅行が理由だと思う」
「そう…。兵長そんなに機嫌良くしてるんだ」
「まぁな。あっでも、そのへんのやつらにはわからねぇと思うけどな。俺らリヴァイ班だけがわかるレベルだとは思うけど」