第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
……やっぱり。
「もちろん。こう見えても近しい人の年齢と誕生日は把握している」
少しドヤ顔で鼻をうごめかせて言うものだから、リヴァイがこんな風に顔をしかめたのも仕方あるまい。
「おい…。まさか嗅ぐだけで誕生日がわかるんじゃねぇだろうな」
「はは、いくらなんでもそれはない。ただ… 職業柄祖母は、嗅げば生まれた季節くらいは言い当てるだろうな」
ミケの祖母のサビは稀代の嗅ぎ師だ。嗅ぎ師とはその嗅覚で医者と占い師を兼ねている特殊な職業のこと。代々非常に優れた嗅覚の持ち主を輩出しつづけたザカリアス家は、天からたまわりしその力で嗅ぎ師をなりわいとしてきたのだ。
「だが安心しろ。俺はザカリアス家の出来損ないだからな、嗅いでも何もわからんさ」
自虐的な言い方をするミケを、リヴァイは鼻で笑い飛ばした。
「ハッ、どうだか。なんでもかんでも嗅ぎまわるお前に安心なんかできるか」
「まぁそう言うなって。嗅いで知ったかどうかは別にして、俺の誕生日情報が色々と役に立ってるだろ?」
「………」
……癪にさわるが、マヤと初めてヘルネに出かけたあの日。7月7日がマヤの誕生日だとわざわざ教えてくれたのはミケだ。今回もすっかり誕生日を忘れていた俺に、誕生日に旅行に行けるように仕向けやがった。
どういうつもりなんだ。何か魂胆でもあるのか。
こいつも少なからずマヤに特別な好意を持っているように感じられるが、それ以上に俺とマヤを後押しするような行動を何度もしてくるのは一体なんなんだ…。
リヴァイが眉間に皺を寄せて、あれやこれやと考えを巡らせていると。
「そう難しく考えるな。素直に礼の一つでも言ったらどうなんだ…?」
……は? なぜ礼を言わないとならねぇんだ。
だが…。
実際問題マヤの誕生日を知れたこと、今回の温泉旅行が俺の誕生日に行けるようになったこと。両方ミケのおかげだ。そこは疑いようがねぇ。しかし別に頼んだ訳でもねぇ。勝手に教えてきて、礼を言えだと? クソが。