第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「温泉にはどうやって行くの?」
「オルブド区までは連絡船に乗って、そこからは馬よ」
「アルテミス?」
「そう、オリオンとアルテミスで行くのよ。兵長と二人で行くのも嬉しいけど、馬たちも一緒なのが、すごく楽しみなの」
「そうなんだ、マヤはアルテミスのこと大好きだもんね」
「オリオンのことも好きよ」
馬の話になると、にこにこ顔のマヤ。
「あのオリオンを手懐けるなんて信じられないけど…、あっ」
ペトラは何かを思いついたようだ。
「オリオンと仲いいんだよね?」
「うん」
「じゃあさ、アルテミスには留守番してもらったら?」
「ん? どうして?」
「オリオンに兵長と二人乗りすればいいと思って。どうせなら、別々に乗ってくより密着騎乗の方がよくない? オリオンもマヤだったら乗っても怒らないだろうし」
「そんなこと…!」
……兵長と、オリオンに二人乗り? 密着騎乗…?
「無理よ、そんなの。恥ずかしい!」
「え~、つきあってるのに? 二人で温泉行くのに? 恥ずかしいも何もないよね」
「恥ずかしいものは恥ずかしいの!」
「いつまでたっても、うぶなんだから~!」
マヤとペトラがいつまでも二人で仲良く温泉旅行についておしゃべりをしていたころ幹部棟では、ミケが三階にある私室に行こうと階段を上っていた。
コツコツと順調だった足取りが一瞬止まる。
……スンスン…。
何かを嗅ぎ取ったミケは黙って口角を上げて、また階段を上り始めた。
コツコツコツコツ…。
はたして階段を上りきり廊下を見れば、想像していたとおりに廊下の壁に背を預けて腕を組んでいる男がひとり。
「リヴァイ、誰か待っているのか? お前にしてはめずらしいな。雨が降らなければいいが」
近づきながら軽口を叩いてみれば、予想どおりに思いきり不機嫌そうな様子でじろりと睨まれた。
「ミケ、てめぇを待ってた」
……恐らくマヤとの温泉旅行の話だろうな。
ミケはそう思ったが、素知らぬ顔をする。
「一体なんの用だ」
「25日が俺の誕生日だと知っていたのか…?」