第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「変なこと言わないで…! そんなことする訳ないじゃない!」
先ほどの羞恥心だけではない少々怒りもまじった様子で、さらに顔を赤くしているマヤを見て、ペトラはまぁまぁとなだめてきた。
「そんな怒らなくても。リボンはしないかもだけど、愛しのマヤが兵長の誕生日プレゼントになることに変わりはないじゃん。ってか兵長だって、そういうつもりで旅行をセッティングしたんじゃないの?」
「それは違うわ」
「なんでよ。もろ誕生日に行くんだから、そのつもりに決まってると思うけど」
「違うのよ。兵長は27日から二日間のつもりで調整日を申請したけど、28日に会議に出なくちゃいけなくて駄目だったの。だったら26日からにしようとしたら、ちょうど団長室に居合わせたミケ分隊長が25日にしたらって言ったのよ」
「へぇ~…」
相槌の仕方が、あまり納得していない雰囲気をぷんぷんと醸し出している。
敏感にそれを察知したマヤは、少々むきになって言い添えた。
「兵長は分隊長が言った25日が自分の誕生日だってこと、私が言うまで気づかなかったんだから!」
「えっ、そうなの?」
「そうよ、どうして分隊長が25日にしろだなんて口出ししてきたかわからないって言ってたもの。で、私が兵長のお誕生日ですよねって言って初めて、あっそうかってなってたのよ?」
「なるほど。それだったら兵長はマヤを誕生日プレゼントにするつもりで温泉に行こうって言った訳じゃないってことね、了解!」
ペトラはお茶目な様子で敬礼する。
「二人で初めて行く温泉旅行が兵長の誕生日だなんて最高だよね。マヤが兵長へのプレゼントだって思ったけど、マヤにとっても兵長との時間がプレゼントだよね」
「そうだね」
「楽しんできてね」
「ありがとう」
すっかりいつもどおりになって仲良く手を取り合っていたが、ここでペトラがにやりと笑った。
「お土産、よろしく!」
「ふふ、了解!」
今度はマヤが楽しそうに敬礼した。