第15章 壁外調査までのいろいろ
「昨日は二日酔いで休んだと聞いたが、もう大丈夫なのかい?」
「はい…! もう本当に! 申し訳ありませんでした!」
再び深々と頭を下げる。
「顔を上げなさい。……そうだ、これをあげよう」
机の引き出しを開け、綺麗な桃色のリボンで結ばれた小さな巾着袋を取り出した。
「……これは…?」
「君の好きな菓子だよ、さぁ」
エルヴィンの優しい声にうながされ巾着袋を受け取ったマヤは、顔を輝かせる。
「可愛い…! 開けてもいいですか?」
「あぁ」
淡い桃色のリボンをするするとほどけば、袋から漂うバターの香りがふわっと鼻こうをくすぐる。
「うわぁ、いい匂い!」
喜びの声とともに星の形のクッキーをつまみ出す。
「……食べちゃって… いいですか?」
「もちろん」
「では…、いただきます!」
ぱくっとクッキーに口にしたマヤは、その美味しさに眉を上げた。もぐもぐと噛んで急いでのみこむ。
「……団長! すごく美味しいです!」
「それは良かった」
「……ご迷惑をおかけしたのに、こんな美味しいお菓子をいただいちゃって。……でも嬉しい… ありがとうございます…」
巾着袋をぎゅっと握るマヤの頬に赤みがさした。
「はは、私はお菓子のおじさんだからね」
「あ! そ、それは…。すみません…」
ますます顔を赤くするマヤに、エルヴィンは優しいまなざしを向けた。
「謝らなくていい。結構気に入っているんだ “お菓子のおじさん” が。これからも菓子をもらってくれるかい?」
「はい…! ありがとうございます!」
全身から喜びが滲み出ているマヤを、
「……ところでマヤ」
エルヴィンはまっすぐ見つめた。