第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「私も…、だからね」
「ん?」
ペトラのささやきが聞き取れなくて、マヤは首をかしげる。
「私も見守ってるからね、マヤのこと!」
「ふふ、ありがとう」
二人の手の温度が、信頼感がアップしていくのと比例して高くなる。
そのぬくもりを最大限に心地良く感じて、いつまでもこのままの二人でいたいと願うペトラはふと思い出す。
「そうだ…、なんかあったでしょう?」
「なんかって?」
「兵長と! ごはんのとき。いつもより来るの遅かったし、なんかいつもよりやたら寄り添ってなかった?」
「えっ、そんなことないよ!」
……寄り添うだなんて! いつもどおりに夕食を一緒にとったけど。
「エルドさんを談話室に呼び出す前に見かけたんだ。いつもと違う雰囲気だった、兵長とマヤ。直接手をつないだり、肩を抱いてる訳じゃないけど、寄り添ってる感じがしてたもん。兵長がマヤを見る目もいつもより優しかった気がする。あんなの絶対なんかあったんだと思うよ。違うの? 何もないの?」
……何もないことはないけれど…。
ペトラには隠すつもりはないし、リヴァイにも二人の温泉旅行は堂々と休暇を取って公にして行くと言われている。
だから正直に報告するだけではあるが、いざ言うとなると気恥ずかしい。
「……何もないってことはないよ…」
「やっぱり! 何なに?」
「温泉に連れてってくれることになったの」
「温泉? すごいじゃん! どこ? クサッツ? ベプウ? あとなんだっけ、有名なとこ」
「イカホっていうとこ」
「イカホ? 知らないなぁ。どこにあるの?」
「ユトピア区とオルブド区のあいだにある山の中だって。私も知らないの。……っていうか温泉に行ったことがないの」
「そうなんだ。私はクサッツに行ったことあるよ。おじいちゃんが健康にいいからって子供のときに家族旅行で行った」
「へぇ…、いいわね。気持ちいい?」
「そりゃもう最高だよ! あったまるし、お肌もすべすべになるよ。いいなぁ、私も行きたい…。あっ!」
あることに気づいたペトラは、その大きな茶色の瞳をまん丸にしている。
「……もしかして泊まりなの!?」