第15章 壁外調査までのいろいろ
「ハンジさん」
「ん?」
「最初は… 巨人パン?ってちょっと変に思ったけど、なんだかちょっと楽しみになってきました」
その言葉を聞いたハンジの瞳に歓喜の星が煌めく。
「だろー! やっぱ私の目に狂いはない! マヤのそういうところが好きなんだ!」
「……そういうところ…?」
「うん。マヤってさ、大人しいし優等生っぽいけど… 変なとこあるよね。私やモブリットと同じ匂いがする!」
「「え!?」」
「間違いない! マヤは同類だ、私とモブリットの!!!」
「ちょっと待ってくださいハンジさん!」「分隊長!」
慌てふためくマヤとモブリットの声が重なった。
「なんだい? 二人して声をそろえて」
「分隊長、俺はまともです!」「ハンジさん、私は普通です!」
「遠慮する必要は全くないのに…」
「「遠慮してません!」」
二人の思わぬ反撃にハンジはやれやれと首を振りつつ、全く気にも留めずに立ち上がった。
「とにかく! 巨人の生け捕りを成功させよう! そして愛すべき巨人パンを調査兵団の諸君の口に放りこもう! いいね、マヤ?」
「は、はい!」
勢いに押されて思わず返事をしたマヤに満面の笑みを向けたかと思うと、行くよモブリット!とハンジはつむじ風のように食堂を出ていった。
………。
二人の背を見送ったあとに手許のパンに目を落とせば、ちょうど千切った形が確かに巨人の肉片にも見えてくる。
……ふふ、大切な食べ物なのによりによって巨人に見えるなんて。そしてそれを気持ち悪いと思わないなんて…。確かに私は変わってるのかもしれない。
ひとりでに笑ってしまい、そんな自分が恥ずかしく…。顔を赤らめながらマヤは朝食に手をつけた。