第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
カラネス区での宿泊は、リヴァイの恩情でペトラとマヤはペトラの実家、オルオはオルオの実家、その他の者は宿だ。
ユトピア区でシムズ隊長とのサシ飲みで懲りたらしく、リヴァイはカラネスの駐屯兵団には一瞬の顔見せ程度の挨拶をしたにすぎない。すぐに部下を引き連れて、オルオとペトラの案内で美味しいと評判の居酒屋へ。
そこでおそらく全周遠征訓練で最後のまともな夕飯ということで、全員で乾杯の運びとなった。
乾杯の音頭を取るのはカラネス区出身のオルオ。
「え~、序盤にジョニーとダニエルが毒蠅に刺されるという…」
すかさずペトラがひじで小突いた。
「ハエじゃない、ブユ!」
「うるせぇな、どっちでもいいだろ…。え~、毒ぶゆに刺されミケ分隊長ともども脱落というアクシデントがあったけど、こうやって無事に最後の突出区わが故郷のカラネスに来ることができました!」
「いいぞ~、オルオ!」
立派に乾杯の挨拶をするオルオに向かって、グンタが合いの手を入れる。
「壁の損傷もなかったし、馬たちも俺たちも怪我なくここに来れて良かったと思う。兵長には、久々に親に顔を見せてこいと言ってもらって感謝してます」
ぺこりとリヴァイに頭を下げた。
「本当はエルドさんたちに俺んちに泊まってもらったらいいんだけど、家すげぇ狭いもんで…」
「いいって、気にするな!」
声の主のエルドにも頭を下げて、オルオは盛大にグラスを掲げた。
「ここの料理はどれも美味いんで…! 乾杯…!」
「「「乾杯!」」」
「お疲れ!」「お疲れ様です!」
カチンカチンとエールの入ったグラスをぶつけ合う。
皆がごくごくとのどの渇きを潤していると、店の主人が自ら大皿に乗った料理を運んできた。
「オルオ! あの有名なリヴァイ兵士長を連れて帰ってくるなんて、立派になったもんだ!」
「へへ、まぁな!」
「ペトラも故郷に錦を飾って、じいさんも喜んでるだろうな。わしも嬉しいぞ」
「ありがとう、おじさん」
「よし、今日は気分がいい。全部わしのおごりじゃ!」
「マジ!?」「えっ、いいの!?」
目を丸くしているオルオとペトラに片目をつぶって、店主は大きくせり出した自身の腹を叩いた。
「もちろんじゃ! さぁ食え!」
「やった~!」「いただきます!」
大喜びでごちそうにかぶりつく調査兵たち。
