第30章 映る
「ねぇ、私あの中だったらエルドさんかな?」
「わかる! 私も」
「あたしはタゾロさん推し」
女子が三人集まれば、話題は男子か甘いもの。ご多分に漏れず、ユトピア駐屯兵の女子たちもそうだった。
「タゾロさんもいいしギータくんも可愛いけど、やっぱリヴァイ班じゃないと!」
「そうだよね、調査兵なんだから強いかどうかが重要じゃない?」
「それでいくと、タゾロさんよりグンタさんの方がいいってことになるじゃない」
「あら、誰もグンタさんが駄目だなんて言ってないわよ」
というような感じでエルドがいいだのタゾロがいいだのと騒いでいると、個室に入っていた者も出てきて手を洗う音がして、話に加わった。
「え~、あたしは断然グンタさんが気になってる。そりゃエルドさんが一番かっこいいけど彼女持ちだよ?」
「嘘! そんなの聞いてない! 嘘でしょ?」
「嘘じゃないって。ミミがよそに行ってるときにエルドさんが言ってたもん」
「え~、なんだぁ、がっかり!」
「だね~! じゃあ、やっぱタゾロさんが良くない?」
「私はグンタさんがいいと思う。ああいうのは絶対浮気しないって!」
などと、本当にいつ終わるのかといった様子で、鏡の前でおしゃべりをつづける女子グループ。
彼女らが去るのを、個室でじっと待っているペトラは段々イライラしてきた。
……ちょっと、いつまで話してんのよ! 早く出ていきなさいよ! 私だって手を洗いたいんだけど!
苛立ちのまま地団太を踏みそうになるが、ここで音をたてては今まで息をひそめていた努力が水の泡。
ペトラはぐっと耐えた。
……あとちょっとの我慢我慢!
「まぁ要するに、みんないいよね。巨人と戦ってるだけあって筋肉質だし」
「え~、そんなのわかるの?」
「わかるわよ、細マッチョ。ベンやハンスとは大違い! あいつら最近飲んだくれジョージとつるんで訓練もさぼってるし、絶対中年になったら太るタイプ!」
「あ~、かもね!」
「まぁこんな巨人も来ない北の地に配属されてるんだから、仕方がない部分もあるかもだけどさ…」
「それにしたって訓練くらいはちゃんとして肉体美を維持しなさいってんのよ!」
「そうだよね!」
女子グループの話題は、いかにユトピア駐屯兵の男どもが調査兵と比較して情けないかどうかで盛り上がった。