第15章 壁外調査までのいろいろ
「してねぇよ! そうじゃなくて、ただ酔ってた雰囲気が可愛かったんだよ、ほわほわしてて」
「けっ! 何が、ほわほわじゃ」
「それに最後には泣き出して眠っちゃってさ…、なんつーの? 守ってあげたい感じ? 俺、故郷に妹がいるからさ、思い出し…」
それまで黙って酒を飲んでいたナナバが、アーチボルドを遮った。
「泣いた? マヤが?」
「あぁ」
「なんで?」
「さぁ…。席が離れてたからわからんが」
「ふぅん…」
ナナバは考えこむ。
……ハンジさんから、マヤが飲み会で酔っぱらったことは聞いた。
みんなが好きだと言いまくったことも。
でも泣いたことは聞いていない。
なんだろう?
マヤはなぜ… 泣いた?
……さっき風呂で話してた、気になってるかもしれない人が関係あるのか?
ナナバは色々と頭の中で考えを巡らせていたが、ゲルガーの上機嫌な声で我に返った。
「まぁ、女なんて酒飲めば笑ったり泣いたり忙しいし? マヤが泣いたってのも別に深い意味なんてねぇんじゃね? 大体女で酒しこたま飲んでも顔色ひとつ変わんないヤツなんて、こいつくらいじゃねぇの?」
バシッと肩を叩かれたナナバは、デリカシーのない同期の男を睨んだ。
「……ハンジさんも変わんないわよ! あんたね、そんなだからモテないんだよ!」
「うっせーわ! 俺はな、酒さえあればいいんだよ!」
喚きながら酒瓶に残っていた酒を一気に呷るゲルガーに、ナナバは心底あきれたようにため息をついた。
「アーチ…、あんたはこんな風にならないでおくれよ…」
「了解…」
「おいお前ら、また二人で俺のこと馬鹿にしてよぉ!」
こうして同期三人の夜は、にぎやかに更けていった。