第15章 壁外調査までのいろいろ
「おいナナバ、お前また生け捕りチームに入れと誘われたのか?」
酒瓶を咥えながらしゃべるゲルガーに、ナナバは微笑んだ。
「あぁ。でもいつもどおりに丁重にお断りしといたよ」
「はは、ハンジさんも毎度生け捕り班のメンバー集めに苦労するよな」
笑うアーチボルドだったが、ナナバの次の言葉に驚いた。
「それが今回は熱心な志願者がいたらしくて、私への勧誘の熱意はそれほどでもなかったんだ」
「「熱心な志願者?」」
男二人の突拍子もない声が談話室に響いた。
気づけばいつの間にか、ちらほらといた他の兵士もいなくなっている。
「誰だ? その変態は?」
「……マヤ」
「「マヤ?」」
またもや男二人の声がシンクロする。
ゲルガーは先ほど見かけたマヤの姿を思い出しながら、あごに手をやった。
「マヤって…、大人しそうないい子だよな…? とてもあのハンジさんの巨人生け捕り班に志願しそうにねぇけど?」
「いやゲルガー、俺も知らなかったんだがマヤは意外とハンジさんと仲いいみたいだぜ?」
「そうなのか?」
「あぁ。昨日の飲み会でつるんでたぜ」
「へぇ…」
ゲルガーの抱える酒瓶の残りがわずかだな… と思いながらアーチボルドはつづける。
「マヤといえば、すげぇ可愛かったんだ」
「アーチ、お前ああいう子が趣味かよ」
ひやかすゲルガーにアーチボルドは首を振る。
「そうじゃなくて、あの子酔っぱらってさ、真っ赤な顔でにこにこしながらみんなが好きだって言っててさ…」
「へぇ…、みんなを?」
「あぁ、みんなを」
「……お前も?」
「……俺も」
そう言いながらかすかに赤くなったアーチボルドの顔をゲルガーは見逃さずに突っこむ。
「お前、酔っぱらいの好きを本気にしてんのかよ!」