第30章 映る
と、そのとき。
「マヤ~! どこ~?」
マヤを呼ぶ声と、人が近づく気配。
その瞬間に口づけと胸への愛撫でとろけていたマヤは目を大きく見開いて、サッと胸元を両手で隠した。
リヴァイも素早く離れて、素知らぬ顔をする。
「いたいた! 兵長、明日も朝は早いんですよね?」
密着していた二人に距離ができたときに、ちょうどペトラが現れた。
「……あぁ」
「やっぱり。ミケ分隊長とジョニーとダニエルが残る… みたいなことを聞いたんだけど、それ以外は普通に全周遠征訓練続行かなって思って」
「サビの話だとジョニーとダニエルは数日は寝ていた方がいいらしいからな。回復したらミケが連れて帰る」
「じゃあこの先はリヴァイ班とタゾロさんとマヤとギータで進むと…」
ペトラは納得したという顔をしてうなずいてから、マヤの方を向く。
「マヤ、朝早いんだし早く寝なくちゃ」
「うん、そうね…」
兵長とキスしていたところをペトラに見られたのではないかとドキドキしているマヤの態度は、少々ぎこちない。
ペトラもそれを察知したらしく、苦笑いしながら。
「もしかしてお邪魔虫だったかな、私? オルオに二人の邪魔するなって言われたんだけど、ベッドどっちを使うか決めてなかったし…」
「ううん、大丈夫。明日、朝が早いならペトラの言うとおり早く寝ないとね」
アルテミスの方を向いて素早く胸のボタンを留めると、くるりと笑顔で振り向いた。
「行こう」
「あっ、うん」
足早に去ろうとするマヤの態度にペトラは驚いて、慌ててリヴァイに頭を下げた。
「お邪魔しました…。お疲れ様でした!」
「……あぁ、お疲れ」
「マヤ、待って…!」
かなりの速度で歩いているマヤに追いついたペトラは顔を覗きこむ。
「ねぇ、どうしたの? 兵長に挨拶もしないで」
「あっ…」
ペトラに指摘されて、マヤはリヴァイ兵長に何も言わずにその場を離れたことに気づく。
そしてペトラはマヤの顔が真っ赤なのに気づく。
「マヤ、顔が赤いよ…? 大丈夫? なんかあった?」
「なんでもないの。早く帰ろ?」
マヤは不思議顔のペトラを残して、再び歩き出した。