第15章 壁外調査までのいろいろ
「そんなこと言われたら訊きたくなっちゃうんですけど。訊いてもいいんですか?」
「駄目~!」
ナナバは、べーっと舌を出した。
「もうっ、ナナバさんったら!」
「交換条件ならいいよ! マヤの気になってる人を教えてくれるなら私も言う」
「………」
困った様子のマヤの肩を、バシッと叩く。
「やだな、冗談だってば! さっきも言ったようにマヤが自分の気持ちに向き合えたら、そのときは教えてくれる?」
「はい。そのときは相談に乗ってください」
「マヤと恋バナするの、楽しみにしてるよ!」
「私もです、ナナバさん!」
二人が大浴場を出ると夜空には変わらず、あまたの星が瞬いている。
互いに言葉では言い表せない想いを抱えながら、星空の下を歩く。
女子の居住棟の入り口が見えてきた。
「ナナバ!」
背後から飛んできた声は。
「ゲルガー! そっちも風呂上りか」
「あぁ。……ん?」
ゲルガーは背の高いナナバの隣にいる小さなマヤに笑いかけた。
「マヤ、いたんだな! クソでけぇナナバに隠れて気づかんかった」
「ゲルガーさん、私そこまで小さくないですよ?」
「ははは、悪ぃ悪ぃ」
「おい、ゲルガー! 私だってクソでけぇってほどでもないからな!」
二人の反撃に頭をかきながら、食堂の隣にある談話室の方へあごをしゃくった。
「まぁまぁ、そう怒んなって。なぁ、これから一杯やろうぜ?」
「仕方ないなぁ。一杯だけだぞ?」
ナナバはやれやれと首を振りながら答えたが、すぐさまつけ足した。
「マヤは昨日の今日だから、部屋に戻って寝るんだよ?」
「……すみません」
マヤが頭を下げると、豪快な声が飛び交う。
「マヤ、また今度お前と飲めるの楽しみにしてっからな! それまでに酒、強くなっとけよ!」
「余計なこと言わんでいい、この酔っぱらいが!」
「酔っぱらってねぇわ!」
二人のやり取りにマヤは思わず笑顔になる。
「じゃあマヤ、ほんと早く寝なよ?」
「はい、ナナバさん。ゲルガーさんもおやすみなさい、失礼します」