第15章 壁外調査までのいろいろ
ナナバの明るい声につられ、マヤも笑顔になる。
「ナナバさんの気になってる人が、ナナバさんの想い人になればいいな」
「ありがとう! 私もそう思うよ。……私たち、こんな仕事じゃない? なんでも全力で立ち向かいたいよね。もし… 好きな人ができたら、その想いを大事にしたいんだ。後悔しないように」
「……後悔しないように…。本当にそうですね」
「うん。……なんだか長話しちゃったね。のぼせてきたわ。私は上がるけど… マヤは?」
もうナナバは立ち上がっている。そのスレンダーな身体を見上げながら、マヤもゆっくり湯船から出た。
「私も上がります」
二人は硬く絞ったタオルでさっと濡れた身体を拭くと、脱衣所へ行く。
マヤが自身の使っている脱衣籠の前に立ち乾いたタオルで髪と身体をぽんぽんと叩くように拭いていると、ナナバが脱衣籠を持って隣に移動してきた。
「やっぱり胸でかーい!」
「もう! 普通です!」
「いいなぁ!」
「ナナバさん、そればっかり!」
しばらくそんなやり取りをしながら身体を拭き、部屋着に着替える。
「マヤって変わってるよね」
「え?」
急にそんなことを言われて、マヤはとっくに着替え終わって短い髪をわしゃわしゃとタオルドライしているナナバの方を見た。
「だってさ… 普通訊くよ? 気になってる人がいるなんて言ったら、誰ですかって」
「あ…」
……なんだろう? 同じことを最近どこかで…。
ミケ分隊長だ…。
……普通… 好きな女がいるなんて聞かされたら、一番にそれは誰かと訊きそうなものだが。
「ナナバさんが教えてくれるなら訊きたいですけど…。でもナナバさんが言いたくないのなら無理に訊きたくないですし…」
「良かった! 私の恋なんか全く興味がないのかと思ったけど、そうじゃないんだね。私に気を遣ってくれて訊かなかったんだね?」
「えぇ… まぁ…」
「いい子だね、マヤは!」
ナナバはぽんと、マヤの頭を軽く叩いた。
「あ…」
分隊長と同じだ。
「ん? 何?」
「いえ…」
分隊長にも同じことを言われ、いい子だと頭を叩かれたことは決して口にしてはいけない。
だって分隊長の恋は、秘密なのだから。