第30章 映る
「うわ~、ベッドカバー可愛い!」
その日の夜、風呂上がりでほこほこしているペトラがマヤの部屋ではしゃいでいる。
「これもマヤのお母さんが作ったんだよね?」
「そうよ」
「いいなぁ! マヤんち、可愛いパッチワークだらけでうらやましい」
マヤの母ルチアの手作りのベッドカバーは、ピンクと茶色のタータンチェック柄のパッチワークキルトである。
リヴァイからマヤの家での宿泊を許可されたマヤとペトラは、食事と入浴を終えてマヤの部屋で一緒に寝ようとしている。
「レイさんのお屋敷に泊まったときは大きなベッドだったけど、うちは狭くてごめんね」
「エクストラキングサイズだったもんね。あれはあれで楽しかったけど普通のベッドでマヤと一緒に寝るなんて、そっちの方がワクワクする!」
嬉しいことを言ってくれるペトラに微笑みながら、マヤはベッドカバーを外して小さなソファにかける。
「明日の朝も早いし、もう寝る?」
「そうだね。とりあえず布団に入ろう、お邪魔しま~す!」
早速布団の中に潜りこむペトラ。
マヤはそれを見て部屋のランプを消してから、閉めていたカーテンを少し開けた。すると窓から月明かりがさして、部屋は真っ暗闇ではなくなる。
「マヤ、早く!」
待ちきれないペトラに呼ばれて、マヤもベッドに入った。
二人とも小柄な方だとはいえ、シングルサイズのベッドに一緒に寝るとぎゅうぎゅうだ。
「ふふ、ペトラあったかい!」
「マヤだってなんかいい匂いがする~」
そう言ってペトラは抱きついてきて首すじをクンクンしてくる。
「やだもう、分隊長みたいな真似しないで」
「あはは、あっそうだ。あの内門のところにいた駐屯兵の人、ミケ分隊長のスンスン攻撃に腰を抜かしてたね」
「ナダルさんね。匂われて笑われて、一体なんなんだって半泣きになってた」
「災難だったね、ナダルさん。マヤの知り合いぽかったけど、やっぱクロルバ出身の人なの?」
「うん、昔から知ってるお兄ちゃんって感じの人よ」
「そうか~、やっぱ駐屯兵って基本出身地に近いところに配属されるよね。カラネス区の駐屯兵も知ってる人だらけ」
ペトラは故郷であるカラネス区を思い浮かべた。