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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第30章 映る


「出ていくときも騒々しいやつだな…」

ミケがあきれている。

「休みなく六日走る…。遊びじゃないんだし、日没後行けるとこまで行って野営ってことになりそうですね…」

「そういうことだ。だがちょうど街や村があれば、宿に泊まる日もあると思う。ゲルガーが生贄になったときは、毎晩街で飲まないとやってられるかと速度を調整して必ず酒場のある街まで走ったから野営はしなかったと聞いている」

「速度の調整なんてできるんですか?」

「東西南北まんべんなく出身者が班にいたから地理に詳しくてな、街まであとどれくらい走れば着くか把握していた。だから日の入り時刻あたりで街に到着するように、速く走ったり遅く走ったり休憩したりしたんだろう。ハンジの言っていた時速35キロは最低速度の話だから、50… いや80で走れるなら走ってもかまわないんだから。もしトップスピードの80キロで全周を走りきれるなら二泊三日で終わるが、さすがにそんな馬は…」

そんな馬はいないと言いかけたミケだったが、ふと脳裏にひときわ大きな黒い馬の堂々とした姿が浮かんだ。

「いや、リヴァイの馬ならいけるかもな」

「オリオンですか?」

「あぁ。オリオンは改良馬じゃないくせに何もかも並外れた能力の持ち主だからな…。あれに対抗できる馬がいるとすれば、エルヴィンのアポロンくらいだろうな」

「オリオンとアポロン…」

漆黒の青毛オリオンと輝く白馬アポロンが、二頭並んで威風堂々と大草原を駆け抜く姿を想像して、マヤは夢見心地だ。

「でも俺たちは馬にそんな無理はさせたくないから、通常の予定日数のつもりで行こう…。マヤ、聞いてるか?」

オリオンとアポロンの妄想でぼうっとしているマヤは、ハッと我に返った。そしてミケの愛馬の様子を訊く。

「あっはい、そうですね。ところで分隊長、ヘラクレスの調子はどうですか?」

「絶好調だ。あいつはアルテミスのことを気に入ってるみたいだから、訓練もはかどるだろう」

「アルテミスもみんなと走るのが好きだから張り切ると思います」

こうして全周遠征訓練に自ら名乗りを上げ、エルヴィンにもすんなりと了承された第一分隊第一班通称ミケ班と第二班だったが、それから十数日後の9月末の訓練開始日当日、全く異なる顔ぶれで出発することになるとはこの時点では知る由もなかった。


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