第15章 壁外調査までのいろいろ
……良かった… マーゴさんで…。
マヤがあらためてそう思っていたところへ、ほかほかと湯気を立てた野菜の煮物とパン、そしていつもの芋のスープをマーゴが運んできた。
「お待たせ!」
「ありがとうございます」
「ゆっくり食べな!」
マーゴはマヤの背中をその荒れた手でバシッと叩くと、マヤの正面にドサッと座った。
「いただきます」
手を合わせてからスプーンを手に取るマヤを、好ましげな様子で眺めている。
マヤは芋のスープを何口かすすったあとに、ふうっと息を漏らした。
「マーゴさん、美味しいです」
「やだよ、いつものスープじゃないか」
「そうなんですけど…、ちょっと私昨日飲みすぎちゃって調子が悪かったんです。……なんだか …温かくて …ほっとします…」
言葉を選びながらゆっくり話すマヤを、マーゴはうんうんと優しくうなずきながら聞いてやっていたが、急に真面目な顔をして身を乗り出した。
「マヤ」
「はい」
人参の煮物を口に入れたあとだったマヤは、口元に手をやり急いで噛むとのみこんだ。
「壁外調査、決まったんだってね」
「はい…」
マーゴの口から壁外調査という単語を聞かされるとは思っていなかったので、少し戸惑う。
「その…」
いつも溌溂としているマーゴにしては、歯切れが悪い。
「その… あれだ。マリウスは残念だったね」
「あぁ…」
マヤはマーゴの様子にやっと合点がいき、微笑んだ。
「はい… でももう、大丈夫です」
「そうかい? あんたたち二人、いつも一緒にごはん食べてたからね」
「ええ… 同じ班でしたし、幼馴染みだったんです」
「ペトラとオルオみたいなもんかい」
「ご存知なんですか?」
「前にペトラに “仲がいいね!” って冷やかしたら、幼馴染みの腐れ縁だって怒られちゃってね!」
マーゴは大口を開けて笑った。
「あの子らは、できてんのかい?」
「ううん、まだそんなんじゃないんですよ」
マーゴはマヤの言葉を聞き逃さなかった。
「まだ… かい。まぁ、あれだね! オルオの方はペトラに首ったけだろ?」