第29章 カモミールの庭で
「あっ、うん…」
「私が知ってるってことは同じ訓練兵団の同期? いや先輩後輩の可能性もあるか! え~、誰だろ? ってか調査兵団に行ったのって誰だっけ…、ええっとロン? マティ?」
同期の名前を次々とあげているリーゼに、マヤはどう声をかければいいか考えあぐねている。
……どうしよう、訓練兵団は関係ないんだけど…。
これはもう、リヴァイ兵長だって言っちゃった方がいいよね…?
「クリストファー? クリストファーって先輩にもいたよね? あっでも調査兵団には行ってないか…、駐屯兵団だったような…」
「あのね、リーゼ!」
楽しそうにあれこれと考えているリーゼを遮るのに、少しばかりマヤは大きな声になる。
「訓練兵団関係の人じゃないの」
「あぁ、そうなんだ」
納得したといった顔のリーゼだったが、次の瞬間。
「え? でも西方訓練兵団出身者じゃないと私知らないけど…。調査兵団の人なんか全然…」
リーゼが何かに気づいたように止まる。
「もしかして…。ううん、そんなことある訳ないか。いやある? まさかね、そのまさかってことある?」
リーゼはひとりでブツブツとつぶやいていたが、キッとマヤの顔を見て。
「まさかエルヴィン団長とかリヴァイ兵長とかってことはないよね?」
「そのまさかなの…」
「嘘でしょう!」
あまりの否定ぶりに、マヤも少々むきになる。
「嘘じゃないよ! それに何、その反応」
「だって団長も兵長もおっさんじゃん」
「お、おっさん…?」
「そうよ、エルヴィン団長はナイル師団長と同期らしいよ? おっさんじゃん」
マヤの知っているエルヴィンもリヴァイも、決して “おっさん” ではない。
二人の名誉のためにも、リーゼの思い違いを正したい。
「リーゼは団長と兵長のことをちらりと見ただけだから知らないのよ。二人は全然おっさんなんかじゃないよ? 私が新兵のときには “団長派” と “兵長派” に女子が分かれていて、ファンクラブみたいな感じで大人気だったんだから」
「……団長派と兵長派? 何よ、そのクソダサいネーミングは」