第29章 カモミールの庭で
ごくごくと紅茶を半分ほど飲んでから、リーゼは訊いてくる。
「さぁ今度はマヤの話を聞かせて? 団長と兵長と一緒に来るなんて、どんな任務なのよ?」
「あぁ、うん…。団長と兵長は兵団合同会議よ。私は…」
もったいをつける訳ではないが、なかなか声が出てこない。
前を見ると、リーゼがどうしたの? といった顔をしている。
心配をかける訳にはいかない。マヤは気持ちを奮い立たせた。
「このあいだね、壁外調査があったの。亡くなった人がいたら、遺族に遺品を届けるんだけど…、その遺族訪問に来たんだ。でね、その亡くなった人は…」
ザックは訓練兵時代からの同期だ。もちろんリーゼとも同期だ。彼の殉職を伝えなければ…。
マヤがザックの名を言おうとする前に、リーゼが口をひらいた。
「……ザックだね」
「え? どうして…?」
……どうしてリーゼが知っているの?
「ザックのお母さんの実家にエルヴィン団長の手紙を届けたのは私だから」
……エルヴィン団長の手紙? 届けた?
マヤは理解が追いつかない。
「団長からナイル師団長に手紙が託されたの。ザックのお母さんの実家がイエローブにあるから捜しだして届けてほしいって。それでイエローブの住民名簿を作ったのが私だったから、私に届けろって…」
「ちょっと待って、何? なんなの? 住民名簿って」
聞き慣れない単語が出てきて、マヤは思わず話を遮って質問する。
「あぁ、あのね、前にも似たようなことがあったんだ。入団してすぐのころ。住所はわからないけどイエローブの住民のところに案内してほしいって。一軒一軒尋ね歩いて、やっと探し当てたんだけど、そのとき思い出したの」
リーゼがひと息ついたので、マヤは条件反射的に訊いた。
「……何を?」