第29章 カモミールの庭で
「そんなことないよ」
今度は、はっきりと言いきった。
「確かに私は調査兵で、壁外調査で巨人と戦って、どんどん仲間は死んでいって…、命を懸けてる、心臓を捧げてるよ? でも調査兵じゃなくても、憲兵でも駐屯兵でも人類の未来のために、巨人に脅かされない自由のために戦うのは一緒よ。直接巨人に刃を振り下ろすことだけが戦い方ではないわ」
真剣に正論をぶつけるマヤをリーゼは少しだけ目を丸くして見つめていたが、
「ふふ、やっぱり変なマヤ!」
と、鼻に皺を寄せて笑った。
それは調査兵団の新兵勧誘式の前日に見せた笑顔と、全く同じものだった。
「調査兵団なんて変人の巣窟だってもっぱらの噂だったし、まともな神経だったら行かないって言われてたけど、マヤはなぜか最初から行くって決めてたよね。理由を聞いてもよくわからなかったし、変なのって思ったけど…」
リーゼは訓練兵時代のマヤを思い出して、遠い目をした。
「でもそんなマヤが私は大好きだった。変人の巣窟の調査兵団に行った変なマヤは、やっぱり変なままで “真面目オバケ” みたいだけど…、大好きよ」
「“真面目オバケ” って…」
「だってそうじゃない? 私の友達のなかで一番真面目だよ。でもそこがマヤのいいところだし、調査兵団に絶対必要な人だと思う。私も負けてられないね! 憲兵団に必要だって思われるように頑張るよ」
「うん、頑張って。私は前向きなリーゼがいつだって大好きだよ!」
「ふふ、ありがとう。憲兵団の訓練なんてね、はっきり言って訓練兵のときよりゆるくて舐めてかかってたけど、明日から真面目に取り組むよ。些細なことでも自分にできることを頑張ってみる」
「うん、そうだね… それがいいよ。私もそうする、自分にできることをやっていくしかないから」
リーゼが元気を取り戻して良かったと、マヤはひと安心だ。それと同時にあらためて自身も頑張っていこうと強く思った。