第29章 カモミールの庭で
「仕事中じゃないの?」
「あ~、そうなんだけどね。警ら隊っていっても適当に街を巡回してるだけだから。リーゼは真面目な方だからあんまサボんないけど、組んでる相手が隙あらば休憩入れたがる子だし。そしてそのサボり魔の一番のお気に入りのカフェだし。可能性は高い!」
“高い!” と言うのと同時にドアをぐいっと開けて、カフェ店内に顔を突っこむセラ。
「やっぱいた!」
叫ぶなり店内に突入して、奥の席に座っているリーゼのところへ。そのあまりのスピーディーさに、マヤはついていくのがやっとだ。
突進してきたセラに気づいたリーゼが目を丸くしている。
「セラ! なんでここにいるの?」
「リーゼ! あんたに会いにきた子を連れてきたんだよ! じゃじゃーん!」
大仰な効果音を口で奏でて、セラはパッと後ろにいるマヤを引き寄せた。
「え? え? マヤ!?」
「リーゼ!」
「嘘! どうしたの!」
リーゼは驚きのあまり、椅子をひっくり返す勢いで立ち上がる。
「ちょっと任務があって、会える時間ができたから。ごめんね、お仕事中だよね」
「何言ってんの! 見てのとおりアユラにせがまれて休憩中。それにもう巡回も終わってるし、帰ろうかと思ってたとこ」
「そうなんだ。じゃあちょっと話せる?」
「もちろん!」
きゃあきゃあと両手を取り合って、再会を喜ぶマヤとリーゼ。そんな二人を微笑ましそうに眺めていたセラは、姉御肌らしく取りまとめた。
「よし、じゃあ私とアユラは帰るよ! で、リーゼはマヤと積もる話をゆっくりと」
「了解」
今まで黙って事のなりゆきを見守っていたサボり魔のアユラが、すっと立ち上がる。黒髪をツインテールにしている美少女だ。
「あの…! アユラさん、すみません…」
自分が突然来たことによって、カフェでゆっくりしていたアユラを追い出すような形になり、マヤは申し訳ないと謝った。
「ううん、全然! もう出るとこだったし、ほら」
空のグラスを指さして、アユラはにっこりと笑った。
「じゃあ、ごゆっくり」
セラとアユラは出ていき、アユラの座っていた席にマヤが代わりに座った。
「あぁほんと、マヤが来てくれるなんて夢みたい!」
まだまだリーゼの興奮はおさまりそうにない。