第14章 拒む
「なんとなく皆さんを好きだと言ったところまでは覚えているんですけど…」
マヤはゆっくりと口をひらく。
「でも… それだって変な意味じゃないですよ? 団長や分隊長として尊敬しているって意味です…」
モブリットが優しくうなずく。
「わかってるさ」
「けど… その兵長を見て泣いたって、なんですか?」
ハンジとモブリットの顔を交互に見ながら、泣きそうな声を出す。
「意味がわかりません…」
「意味がわからないのはこっちだよ~! てっきりリヴァイがマヤに手を出したのかと思ったけど違うのかい?」
ハンジの手を出すという言葉に、マヤは目を真ん丸にした。
「そんな! 違います…。それであの… 私が泣いて、そのあとどうなったんでしょうか?」
「うーん、今と一緒だよ。私がリヴァイに何かされたのかって訊いたら君は違うと言いながら泣きつづけてそのまま寝ちゃったんだ」
「あの… 兵長はなんて…?」
ハンジとモブリットは顔を見合わせた。
「モブリット、覚えてるかい?」
「え~っと、何も言ってなかったような…」
モブリットを遮って、ハンジが叫んだ。
「あぁぁぁ! 思い出した! マヤはなんで泣いたのかって訊いたら、知るかって言ってたんだった!」
「怒ってました…?」
「うーん、どうだろうねぇ! いつもあんな顔だからね」
「……そう… ですか…」
マヤはそれでなくても痛む頭が、より一層ズキズキ脈打つのを感じた。左の人さし指と中指、薬指の三本を揃えてこめかみを押さえる。
「まぁ そんな気にしなくても、酔ってたってみんなわかってるし大丈夫!」
「はい…」
元気のないマヤを、ハンジは元気づけるように明るく叫ぶ。
「次からは酔わないように気をつけようねぇ!」
「分隊長が酔わせたんでしょうが!」
「モブリット… 私に突っこむ暇があったら、さっさと人参を食べるんだ!」
「……ばれてました?」
「なんでもお見通しだよ! 君が人参をペルセウスにやってることだってね」
「………」
黙ってしまったモブリットにハンジはニヤリと口の端を上げると、マヤを心配そうに見やる。
マヤは、先ほどよりさらに辛そうに眉根を寄せていた。
「マヤ、今日は休んだ方がいい」
「はい…」