第14章 拒む
「マヤ、食べられそうか? 大丈夫ならスープだけでも口にした方がいい」
優しく声をかけてくれるモブリットに、マヤは頭を下げた。
「すみません! ありがとうございます。頭が割れるように痛いんですけど、食べる方はどうだろ…」
マヤはいただきますと手を合わせると、スープを口にしてみる。
「ん… 少しなら大丈夫そうです」
「うん、ならゆっくり少しだけでも飲んでおけ」
「はい」
マヤは少しスープをすすってから、ハンジにお願いする。
「ハンジさん、私… 何しちゃったんですか? 教えてください」
「うーん、教えようかなぁ、どうしようかなぁ。あ! そうだマヤ、今度の壁外調査で巨人を生け捕りにしたいんだけど、誰も賛成してくれないんだよ。マヤは賛成してるってことにしていいかい? いいなら昨夜のことを教えようではないか」
突如降って湧いた “巨人生け捕り” なる言葉に、マヤはむせる。
「きょ、巨人?」
「うん。マヤが賛成してくれたら、賛成者三人ってことでエルヴィンも少しは考えてくれるんじゃないかな~って思ってさ!」
「はぁ…」
「よし! 決まりだ! じゃあ、交換条件だから教えてあげよう!」
モブリットがあきれたように首を振った。
「もともと分隊長がマヤを酔わせたのに、交換条件って…」
「何か文句があるのかい、モブリット?」
「いえ…」
ハンジは腕を組み、マヤに笑いかけた。
「なぁにマヤ、大したことないよ」
「はい…」
「酔った君は、あそこに居合わせた男どもみんなを好きだ好きだと言いまくった挙句に寝てしまったんだ。で、リヴァイだけ好きだと言わなかったから叩き起こしたら、なぜかリヴァイの顔を見ながら泣き出してさ!」
「……えっ!」
マヤは手にしていたスプーンを落としそうになる。
「……ハンジさん… 嘘ですよね? またいつもの冗談でしょう?」
「ううん、本当のことさ! なぁ、モブリット?」
モブリットがマヤの方を気の毒そうに見ながらうなずいた。