第29章 カモミールの庭で
ひらいた扉からぬっと入ってきたのはミケ。
そして。
「やっほ~!」
ミケの後ろからひょこっと顔を出したハンジは、すこぶるご機嫌だ。
「リヴァイ、マヤとよろしくやってるかい?」
あまりの挨拶にマヤは赤面し、リヴァイは一気に不機嫌モードに突入した。
「……揃いも揃って一体なんの用だ」
「なんの用だとは失礼だね!」
「失礼なのはてめぇだろうが」
「ちゃ~んと仕事で来たのにひどい言われようだなぁ。はい、これ」
ハンジはミケが持っていた書類を奪って提出した。それは壁外調査の諸々の報告書であったり、立体機動装置の使用許可申請書であったり、調整日の日程表であったり。
書類を受け取ったリヴァイがひとこと。
「仕事なのはミケだけじゃねぇか。てめぇの用は?」
「うん? 私はねぇ… ミケから聞いて、なんかリヴァイとマヤが面白そうだから見にきた」
「……は?」
「エリー城では私の薬に頼らなくても全然大丈夫だったみたいだね?」
楽しくて仕方がないといった様子のハンジは、くるりとマヤの方を向いた。
「マヤ、恋バナのつづきを楽しみにしてるよ!」
「えっ、な… 何も話すことなんかないです…!」
「またまた~! 恥ずかしがっちゃって可愛いねぇ!」
ハンジとマヤのやり取りを尻目にリヴァイはミケに冷たく訊く。
「おい、ハンジに何を話しやがった?」
「質問に答えただけだ」
「……質問?」
「あぁ」
険悪そうなリヴァイとミケのあいだに、ハンジが慌てて割って入った。
「ストップストップ! リヴァイ、そんな怖い顔しない。ミケに罪はないって。たったひとつの質問に答えただけなんだから」
「どんな質問なんだ」