第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
マヤの気絶により一度は欲望を抑えたリヴァイだったが…。
マヤの無意識の艶めかしい声を聞き、愛の行為の証である二人の混じり合った唾液をしどけなく口から垂らしている無防備な姿を眺めていると、むくむくと淫情が頭をもたげる。
「………」
じっとマヤの顔を凝視していたが、とうとう我慢の限界を超えた。
半開きになっている口からあふれてきている唾液をぺろりと舐める。
「甘ぇ…」
身体の芯から震えるような甘い唾液をじっくりと味わう。
口の外にあふれた唾液はハンカチで拭き取ったし、拭き取れなかった分は舐め上げた。
……だがまだマヤの口の中には、どんな高級な酒より甘美な唾液がたっぷりとあるに違いねぇ。
むらむらする。また目の前のさくらんぼのような紅いくちびるにむしゃぶりついて、口内を犯したい妄想に憑りつかれる。
「……ん」
そのときマヤが漏らした吐息でハッと自制する。
……一体何を考えているんだ、俺は…。
俺のせいでマヤは今こうして倒れているんじゃねぇか。
それをもう一度同じ…、いやもっと激しく吸いつくしてやろうと思うなんてどうかしている。
……しかも…。
ここでリヴァイは、普段兵団内で噂されているおのれの性質を思い出して皮肉な笑みを浮かべた。
……潔癖症で知られているこの俺が、ツバを美味ぇと思うなんてな。
それもこのマヤがクソ可愛いからこそなんだが…。
愛おしい想いがあふれ出てくる。
朝焼けに浮かぶマヤの美しい顔。近づけば初めての口づけの予感に震えながら、ぎゅっと閉じられたまぶた。最初は優しく、ふれるだけのキスを。
……もちろん、一度だけでは物足りねぇ。
何度も何度も、そして繰り返すたびに欲は深くなり、それに比例してキスも深く激しいものになっていった。