第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
リヴァイは背中にまわしていた左手をマヤの後頭部に移動してがっちり支えると、右手は愛おしそうに頬に添えた。
もう終わりかと思ったマヤが何かを言おうと口をひらきかけたが、リヴァイの視線の強さに息をのむ。
頭をホールドされ、頬は白く骨ばった手に支えられ、切れ長の双眸に射抜かれて。
「……もう一度してもいいか」
「………!」
そんなことを訊かれてもマヤは胸がいっぱいで、顔は固定されて動かせないし、初めての口づけをしたくちびるはリヴァイのくちびるのやわらかな感触に蕩けそうになっているのに、返事をする余裕などない。
マヤの様子を見てリヴァイはふっと笑うと、さらに顔を近づけた。
「嫌だと言ってもするがな…」
そのまま再び口づけられる。
「んっ…」
身動きするひまもなく押し当てられたくちびるは、先ほどより強くて… 長い。
「んん…」
また息ができなくてマヤは甘い吐息を漏らしてしまう。
そのたびにリヴァイはくちびるを離して何度も何度もふれるだけのキスを角度を変えて降らせた。
リヴァイのくちびるがマヤをついばむようなキスを繰り返すたびに、ちゅっちゅと優しい音が響いて。
そのことに気づいたマヤはその音と、何度も角度を変えてふさがれるくちびるの、やわらかくて温かい感覚に身体の奥底から急速に熱が広がっていくのを知った。
その熱に浮かされて、初めて湧き上がる淫らな気持ちに全身の力が抜ける。
「……兵長…」
リヴァイの腕の中で頬を赤らめ、ついばむキスの合間に見上げてくる瞳はうるうると潤んでいる。
……クソ可愛い。
リヴァイはたまらずにマヤの目元にもキスをする。
「ひゃっ」
キスはくちびる同士でするものだと思っていたマヤは、びっくりして高い声が出てしまった。
驚いているマヤにはかまわずに、ちゅっちゅとまぶたにも頬にもキスを降らせるリヴァイ。
「やっ、兵長…! そんなところ…」
恥ずかしさのあまりに首をいやいやと振ったマヤの顔を両手で押さえこむと、リヴァイは真顔で訊く。
「嫌か?」
「……嫌… じゃないけど…、恥ずかしい… ので…」
「……なら、なんの問題もねぇ」
リヴァイは不敵に笑うと、またマヤのくちびるをふさいだ。