第13章 さやかな月の夜に
「えっとぉ…、最初は声の大きな怖い人だなぁって思ったんですけど、優しくていい人でしたよ?」
「へぇ~ そうなんだぁ!」
「はい~ あのねハンジさん! ラドクリフさんは、お花が好きなんです!」
マヤの発言に皆が一斉にラドクリフに目を向ける。
浴びせられた視線に照れながら、ラドクリフは頭をかいた。
「いやぁ… 前によ、そいつと花壇で一緒になったときにちょい色々話しこんだからな」
強面のラドクリフと花壇が不釣り合いで、皆はフッと笑った。
「ひまわりの花言葉は “あなただけを見つめる” なんですよぉ。ラドクリフさんに教えてもらったんです!」
得意そうなマヤに、ミケが訊く。
「花言葉?」
「はい~ お花にはそれぞれ意味があるからって言ってました!」
今まで黙って聞いていたエルヴィンが、ラドクリフに言葉をかけた。
「ラドクリフ、君にそんな得意分野があったとはな」
「団長! 少しかじってるだけですぜ?」
ハンジがニコニコしているマヤに、さらに訊く。
「マヤ、じゃあ エルヴィンは?」
「エルヴィン団長は~」
マヤは斜め向かいに座っているエルヴィンをじーっと見つめたあと、ひとことで片づけた。
「お菓子をくれます!」
その瞬間、ミケが鼻で笑った。
「あっはっは、私はお菓子のおじさんといったところかな?」
エルヴィンの発するおじさん…という単語を耳にしたマヤは、手のひらを顔の前で振りながら慌てた。
「ち、違うんですよ 団長! 決して、おじさんに見えてる訳じゃないんです~! ごめんなさい…!」
マヤが何を謝っているのか見当もつかないエルヴィンに、ミケが理由を教えてやる。
「前に年齢を当てさせたことがあってな、マヤはお前のことを35歳だと思ったんだ」
「あはは、そうか」
「団長は大人で頼れる心臓を捧げる素晴らしい団長なので~あります」
むにゃむにゃマヤはつぶやいている。
「じゃ、ミケは?」
「ハンジさぁん… とっても眠いですぅ…」
まぶたが下がってきているマヤを揺さぶるハンジ。
「マヤ~! あとミケだけだから! 起きろぉぉぉ!」
「ミケ…分隊長… はぁ…」
「うんうん」