第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
すっかりリヴァイとマヤの二人を見守る保護者のような気持ちになってしまっているミケは、声をかけずにはいられなかった。
「またリヴァイと執務ができるな」
「分隊長が言ってくださらなかったら、兵長は自分から手伝いに来いと言わなかったと思います。またお手伝いすることになって嬉しい…」
「……良かったじゃないか」
「ありがとうございます!」
……いつも分隊長は私の気持ちに寄り添ってくれたわ。
まだリヴァイ兵長への気持ちがなかったころから。
不機嫌そうで何を考えているかわからなくて、リヴァイを怒らせたのかと心配になったときも。
リヴァイへ淡い恋心のようなものが芽生え始めたころも。
はっきりとリヴァイを好きだと自覚したあとも。
……いつも味方してくれていた。兵長の執務室に行きやすいように書類を渡してくれたり…。くんたまだって兵長と王都の居酒屋で食べるように言ってくれたわ。
そして今も、執務の手伝いを再開する後押しをしてくれた。
優しい目をしているミケに、マヤは感謝の気持ちでいっぱいになる。
そしてふっと、気にかかっていることを訊いてもいいだろうかと思った。
「……あの、分隊長」
「ん?」
「訊いていいのかどうか…、わからないのですが…」
訊いてみたいが、いざ言葉にしようとするとためらわれる。
「なんだ? 言ってみろ」
「えっと…。分隊長はいつも私に親切にしてくださいました。私が兵長と…」
“兵長とつきあえることができたのも、分隊長のおかげもあると思います”
マヤはそう言おうとしたが、恥ずかしい気持ちが先立って口にすることができない。
黙ってしまったマヤに優しく訊き返してやるミケ。
「リヴァイがどうした?」
「兵長とその…、おつきあいするようになったのは分隊長のおかげです」
やっとのことでそう言うと、次の言葉はすらすらと口にすることができた。
「すごく感謝しています。それで、分隊長が気にかけてくれたように、私も分隊長のことがずっと気になっていました」
「……俺のこと…?」
マヤが何を言いたいのかわからないミケの声が、執務室に訝しげに響いた。