第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
リヴァイ本人を目の前にして “おつきあいすることになった” と口にすることは、マヤにとってはものすごく恥ずかしいことで。
頬だけではなく、耳まで赤くなっていく。
「なるほど。マヤがリヴァイとつきあったからリヴァイ班に編入するんじゃないかと、ジョニーとギータが言ったのか」
「そうなんです。もちろん私はちゃんと言いましたよ? 兵長はそんなことを考える人ではないって」
「……そんなことって?」
ミケは笑いを噛み殺しながら、とぼけて質問をしまくっている。
「つきあったら兵長が私を手元に置いておきたいんじゃないかって。そんなことある訳ないじゃないですか。タゾロさんもジョニーを叱っていました。“兵長が私情なんか挟む訳ないだろうが” って」
いつしかその小さな白い手でこぶしを握って説明しているマヤが、ミケには愛らしくて。
「そうだな。確かに “私情を挟む訳がない” だろうな、リヴァイ?」
そして先ほどから立つ瀬がないリヴァイの様子が面白くてたまらない。
「………」
私情を挟みまくってミケにマヤをよこせと言っていたリヴァイは当然ばつが悪くて、返事に困って黙っている。
そんな事情を知らないマヤは、リヴァイが何も言わないのは “気を悪くしたからではないか” と考えた。
「兵長、すみません。兵長がそんなことを考える訳ないのに…」
申し訳なさそうに頭を下げるマヤに、リヴァイはかろうじて一言だけ返すことができた。
「いや、別に…」
「本当にジョニーたちには困ったものです」
“私情を挟む訳がない” リヴァイ兵長のことを後輩たちが誤解していることに、マヤはぷりぷりと怒っている。
「もう二度と変なことを言わないように、もう一度ちゃんとジョニーとギータには言っておきますから。兵長とつきあっても、そんなことにはならないって」
「………」
「……兵長? どうかされましたか?」
ミケはリヴァイとマヤの様子が愉快でたまらないが、さすがにリヴァイが少し気の毒になってきたので話題を変える助け舟を出した。
「結局マヤの異動はないし今までどおりなんだから、この際リヴァイの執務の手伝いも復活させたらどうだ?」