第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
多少ニュアンスが違うとはいえ、心配で守りたくてそばに置きたいも、可愛いから欲しいも同じといえば同じだ。
マヤをミケ班からリヴァイ班に引き抜きたい理由をずばりと言い当てられて、リヴァイはめずらしく自身の顔が赤くなるのを感じた。
そして精一杯の努力をして、やっと出た言葉は。
「馬鹿を言え。そんな訳あるか」
「ふぅん、そうなんだ。マヤが好きだから自分のところに置いておきたいんじゃないんだ。じゃあ話が元に戻るけど、リヴァイの理由はなんだい? さぁ、プレゼンのつづきをしようじゃないか」
「断る」
短くひとことでリヴァイは皆に背を向けた。そのまま誰にも顔を見せずに、
「ミケ、さっきの話は忘れろ。マヤは今のままお前の班で面倒を見ろ」
と吐き捨てたのち、部屋を出ていってしまった。
「あぁぁ! 行っちゃったよ! もうちょっとでリヴァイの口から、“マヤが可愛いからリヴァイ班に欲しいんだ” と言うのを聞けるはずだったのに! くぅぅぅ、惜しかった!」
髪をかきむしって残念がるハンジを、エルヴィンがなだめた。
「まぁそう悔しがるな。リヴァイの顔を見たか?」
「へ? あぁ、うん。なんだかいつもより赤かったよね?」
「あれは認めたも同じだ。言葉で聞けなくて残念だが、あれで充分だろう。許してやれ」
「そうなんだけどさ、やっぱりリヴァイの口からどうしても “マヤが可愛いからそばにいたい” とか “マヤが好きだから” とか言わせたかったんだよね。そうしたら一生それをネタに生きていけるのに」
ハンジは少し悪い顔をしている。
「おいおい、なんだ? ネタとは。脅迫でもする気か」
「物騒なことを言わないでよ。ちょっとからかって冷やかしていじって遊びたいのと、あとはそうだな…。リヴァイが自主的に新薬の被験者になるとか、もしかしたらそういうこともあるかもしれない」
最後の方はごにょごにょとつぶやくように言うハンジに、黙って聞いていたミケが笑いながら突っこんだ。
「やっぱり脅迫じゃないか!」