第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
“理由は…” と口にしたきり押し黙っているリヴァイを置き去りにして、三人は話し始めた。
口火を切ったのはハンジ。
「エルヴィン、なんでリヴァイは黙っているのかな?」
「さぁ…。何かを言いかけたことは間違いないから、それがよっぽど言いにくいのかもしれないな」
「言いにくい? なんでさ、今さら遠慮するような間柄でもないと思うけど?」
「それもそうだ。ミケ、お前はどう思う?」
「言いにくいのは、恥ずかしいからじゃないのか?」
「なるほど! ミケチにしたら鋭い指摘だね。口にできないほど恥ずかしい理由とは…」
「おい、いつまでその変なあだ名で呼ぶんだ」
「いいじゃないか。結構可愛いと思うんだけどな~。ミケも本当は気に入ってたりするんじゃないの?」
「いいや、全くもって気に入っていない」
「そうかい? エルヴィンはどう思う? ミケはこう見えて意外と可愛いものが好きだったりしない?」
「そうだな…。言われてみれば確かに可愛いものが好きかもな」
「だろ? ミケはこの図体に似合わず可愛いものが好き! だからマヤを手放さないのか…? そうだ、そうに違いない! マヤは可愛いからね、そうだろリヴァイ?」
すっかりここにいる存在を忘れ去られた形になっていたリヴァイは、いきなりハンジに話を振られて驚いて、またもや何も言葉にできない。
「なんとか言いなよ。それともあれかな、ミケもマヤを可愛いと思っているなんて言語道断、許しはしない、絶対マヤはリヴァイ班に…って!」
好き勝手にリヴァイの気持ちを代弁していたハンジは、急にひらめいた。
「あぁ、そうか! なんでこんな単純なことがわからなかったんだ。理由は “マヤが可愛いから欲しい”。ただそれだけだ。そうだろ、リヴァイ?」