第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「マヤさん、オレ…」
それまで黙っていたギータの頬が赤い。
「マヤさんと一緒の班で光栄です。マヤさんならリヴァイ班でもおかしくないとオレは思うけど…。確かに兵長は私情は持ちこまないっすよね。でももし…、もしマヤさんがリヴァイ班に行ってもオレは応援してますから…!」
「いや、だから…」
ギータがクソ真面目に “応援してる” と言うものだから、マヤは困ってしまった。
午後の訓練は立体機動訓練。ミケは指示だけを与えて、会議があるとやらで不在だった。
会議室ではなく団長室で、それもエルヴィン、リヴァイ、ミケの三名だけの臨時会議。会議というよりは単なる話し合い…、もとい揉め事のようだ。
「駄目だ」
ミケが渋い顔をして、リヴァイを見下ろしている。
「……お前のところにいるより俺の班の方が確実だろうが」
リヴァイも負けじと長身のミケを精一杯睨みつけている。
「確実? 何が」
馬鹿にしたように鼻を鳴らすミケ。
「お前にマヤを守れるのかと言っている」
「……は? それがマヤを譲れという理由なのか?」
「……あぁ」
ミケはわざと、ため息をついてみせる。
「はぁ…。駄目だ」
執務机の前に立ち、やり合っている二人を黙って見守っていたエルヴィンが何か言おうとしたときに、団長室の扉が出し抜けにバーンとひらいた。
「リヴァイ! 抜け駆けするな!」
飛びこんできたのは、言わずと知れたハンジ。
「マヤが欲しいのは私だって一緒だよ! 大体ミケにマヤをくれと言ったのは私の方が先なんだからね!」
「……なんだと?」
“本当か?” とリヴァイが睨みつけてくるので、うなずくミケ。
「でもミケが存外ミケチでさ~! マヤを手放す気はないみたいなんだよね」
ハンジはやれやれと両手のひらを上に向けて肩をすくめた。