第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
今になって思い返せば、あらためて感じる。
……やっぱりレイさんは、私が断るってわかっていたんだわ。
その後エルヴィン団長と話し合ったあとに帰っていくレイをミケと見送ると、馬車の中が白薔薇で埋め尽くされているのを知った。
馬車が見えなくなるまで見送り、団長室へ戻ると告げられた。
「レイモンド卿から寄付の申し出があった。二週間後の8月20日に壁外調査をおこなう」
「……プロポーズを断ったのに、レイさんは寄付してくれるのですか?」
驚くマヤに、エルヴィンは涼しい顔で答える。
「そのようだね」
そしてリヴァイ兵長と二人で行った食堂では、あっという間にたくさんの人に囲まれた。
まずはナナバ、ニファ、ゲルガー、アーベル、ケイジのハンジ率いる第二分隊所属の五人。
「兵長、お疲れ様です!」
「マヤ、白薔薇王子のプロポーズを断ったんだって?」
「兵長とつきあうことになったって聞いたけどホントなの?」
ナナバとニファが質問を重ねるたびに、リヴァイの眉間の皺が深くなっていく。
「お前ら、どこからそれを?」
リヴァイは答えがわかっているのに条件反射的に訊いてしまう。
「ハンジさんですけど?」
その答えはわかっていたのに腹立たしい。
「……クソメガネの野郎…!」
そうこうしているうちにギャラリーはどんどん増えていく。
リヴァイ班に、ミケ班のタゾロと新兵三人組。
質問攻めにされているマヤを、遠巻きにして見ている多数の調査兵たち。その中にはリヴァイに恋している新兵の女子グループもいる。
完全に調査兵団の兵士全員に、リヴァイとマヤがつきあい始めたことが知れ渡った。
そして食堂に遅れてやってきたハンジとモブリット、ラドクリフにアーチボルドの分隊長副官コンビによってもたらされた壁外調査の日取り。
リヴァイとマヤの交際、次の壁外調査と相次ぐ驚愕の事実に、食堂は上を下への大騒ぎとなった。
……本当に、怒涛の一日だったわ…。