第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
どうしてだかマヤがレイモンド卿のプロポーズを受け入れて結婚すると勝手に思いこんでいるラドクリフは、エルヴィンの次の言葉に飛び上がって喜んだ。
「ラドクリフ、マヤはレイモンド卿とは結婚しない」
「本当ですかい? それでこそマヤだ。どこに行っても立派にやっていけるとは思うが、やっぱりここで俺たちと一緒の方がいいに決まっている!」
「あぁ、そうだな。それから…」
エルヴィンはちらりとリヴァイとマヤの二人に視線を送ってから、ラドクリフに告げた。
「リヴァイとマヤは、つきあうことになったそうだ」
「へ?」
ラドクリフはリヴァイを見て、マヤを見て。
「へ? 今なんて?」
「二人はつきあっている」
「うおぉぉぉ! そうですかい!」
ラドクリフは熊のようにリヴァイに突進した。
「リヴァイ! 俺はな、お前がマヤに惚れていると団長やハンジが言っているのを聞いてもな、イマイチ信じられなかったというかぴんと来てなかったんだが、そうか! 本当だったんだな!」
リヴァイの顔に唾を飛ばしそうな勢いでしゃべりかけたかと思うと、次はマヤだ。
「マヤ、お前は本当にいい子だ。花を愛する人間は幸せになるべきだもんな。でもあれだな…、リヴァイとつきあっているということは、マヤもリヴァイが好きだってことか…。本当なのか? 今でも信じられんが? どうなんだ? 好きなのか?」
「……はい」
勢いに押されてYESの返事をしてしまったマヤは、興奮したラドクリフに両手をがしっと掴まれて、ぶんぶんと上下に振りまわされた。
「そうかそうか! それでリヴァイのどこが好きなんだ? 喧嘩は強いかもしれんが愛想は悪いし、大体一緒にいて話が弾むタイプでもないしな」
「えっ、あっ、それは…」
「ラドクリフ!」
困っているマヤにハンジが助け舟を出したのかと思いきや。
「リヴァイはマヤと二人のときは態度が違うんじゃないかなぁ! ねぇマヤ、どうなんだい? リヴァイは優しい? 手を握って愛をささやくのかい?」
「そんなこと…!」
手を握られ、質問の矢が飛び、マヤは泡を吹いて卒倒しそうになっている。