第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「そうでしょうか…」
「そうだよ! ほら早速、明日のレイモンド卿への返事の場に同席するとか言い出してるだろう? 大体、マヤは今日どこにいたんだい?」
「……ヘルネです」
ハンジの質問の意図がよくわからないが、素直に答える。
「そこにリヴァイが現れて、何があったか知らないがムフフのムフフでつきあうことになったんだろう?」
「……ええ、まぁ…」
「問題はなぜマヤのいるヘルネにリヴァイが現れたかだ」
「……はぁ…」
「それはリヴァイがミケの首根っこを掴んで、窓から外へ突き出して “さぁ嗅げ! マヤはどこにいる!” と犬のようにマヤの匂いを嗅がせたからなんだ。ミケのたぐい稀なる嗅覚のおかげで兵団敷地内にマヤがいないと知ったリヴァイは、ヘルネに駆けつけたって訳さ」
「それで犬… ですか…」
「あぁ。ホント死に物狂いだったんだろうねぇ! まぁそのおかげでこうしてマヤを手に入れた訳だし? 良かったね、リヴァイ!」
今度はリヴァイの肩をバシッと叩く。
「良かったねじゃねぇ…。人のことをボロクソ言いやがって…!」
「あれ? だってマヤとレイモンド卿の結婚を阻止するために、リヴァイが血眼になってミケの鼻まで使ってマヤを捜したのは本当だろう? そして君が人類最強でチビの潔癖症で嫉妬深いのも、これまた本当じゃないか。ボロクソも何も私はシンジツしか口にしていないつもりだけどね」
「………」
まくし立てるハンジの勢いに圧倒されたのか黙ってしまったリヴァイを、隣に立つマヤはそっと横目で見ながらこう考えていた。
……否定しないってことは、兵長はハンジさんの言うように嫉妬深いのかしら?
でも… そうだったとして、何か困るのかな? つきあったら大変?
ハンジの言葉を考えてみるが、つきあったことなどないマヤには皆目わからない。
「どうしたんだい、マヤ。難しい顔をして」