第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「嫌というか、その… 恥ずかしいので…」
赤い顔をしてささやくマヤに、ハンジが加勢する。
「そうだよ! プロポーズは調査兵団が絡んでいるとはいえ突き詰めれば、レイモンド卿とマヤの個人的な交渉なんだ。そこに顔を出そうなんていくらリヴァイでも駄目じゃないかな。まぁ君の気持ちもわからないでもないけどね。聞いたよ~、必死になるあまりミケを犬代わりに使ったそうじゃないか」
じろりとリヴァイに睨まれたミケは、ニヤニヤしながらわざと天井へ視線を逸らす。
「……兵長、犬ってなんですか?」
ハンジの言葉を不思議に思ったマヤがリヴァイに訊いている。
苛立ちを隠さずハンジとミケを睨んでいるリヴァイ。その恐ろしい視線を気にも留めずににやけているハンジとミケ。犬の意味がわからずに不思議そうにしているマヤ。
もう団長室はカオスな状態だ。
それを静かに眺めていたエルヴィンが、事態の収拾をはかった。
「リヴァイ、マヤ。単刀直入に訊くが、君たちは…、交際しているのか?」
「あぁ、そうだ」
リヴァイははっきりと肯定し、マヤは頬を赤らめてうなずいた。
「そうか、それはおめでとう」
エルヴィンに “おめでとう” と言ってもらえるとは思ってもみなかったリヴァイは、めずらしく一瞬ぽかんとした間の抜けた表情になった。
「マヤ、おめでとう!」
ひとっ飛びでマヤの横にやってきたハンジがバシバシと肩を叩く。
「あ、ありがとうございます…」
思いがけず団長室で祝福されて戸惑いながらマヤが頭を下げると。
「でもいいのかい? リヴァイは人類最強かもしれないけれど、チビだし潔癖症だから、こういう輩は総じて独占欲が強くて嫉妬深いから…」
「おい、身長は関係ねぇだろうが…!」
リヴァイの怒りの一言は華麗にスルーされた。
「……つきあったら大変だと思うよ?」