第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「ハンジさん…、分隊長…!」
兵団に残る答えを出した自分を受け入れてくれることに感激しているマヤ。
「レイモンド卿の無限の資金もすこ~しだけ魅力的だけど、やっぱり可愛いマヤがいないとね! なぁに、資金は私が新薬をバンバン作って稼ぐから心配しなくていいよ!」
ハンジは自身の胸をどんと叩いて、片目をつぶってみせた。
「あぁ、そのとおりだ。資金の心配など君はしなくていい」
エルヴィンは再度マヤを安心させるように、おだやかな声でハンジに同意した。
そして。
「明日、恐らくレイモンド卿はいつものようにトロスト区へ君を連れていき、そこで返事を求めてくると思われる」
「はい…」
不安そうに相槌を打つマヤをちらりと見たのちに、エルヴィンは机上に置いてある一通の手紙に視線を落として説明をつづけた。
「これはレイモンド卿から今日届いた早便の手紙だ。ここには明日の返事いかんによっては、そのままマヤを王都へ連れ帰るとある。こちらとしては失礼のないように対処したい。よって必要以上に期待させるのも酷ではあるし、レイモンド卿がここに来た時点できっぱりと返事を差し上げるのが筋だと思う」
「了解しました」
「よし。では場所はここ… 団長室で。そのときは私は席を外そう、いいね?」
「はい」
……プロポーズの返事をすることだし、いくら皆に内容を知られているからといっても、他に誰もいない方がいいわ、恥ずかしいもの。
とマヤが内心で思っていると、リヴァイが口を出してきた。
「……俺が同席する」
「兵長…!」
困った風に声を上げたマヤに対してリヴァイは不機嫌そうにつぶやいた。
「嫌なのかよ…」