第27章 翔ぶ
マヤへの想いを正直に伝えれば、マヤの想いも知ることができた。
リヴァイは胸がいっぱいになって、たったひとことしか返せない。
「……そうか」
「はい…」
二人はもう一度、マリウスが刻んだ文字を眺める。
「マリウス…、お前の大切な幼馴染みだった…」
「ええ、そうです…」
マヤは言葉を選ぶ。
「兵長、さっきここで私とマリウスがどんな誓いを立てたのかと言いましたが…」
もちろんマリウスの自身への恋の気持ちを赤裸々に語る気は、マヤにはない。亡くなっているとはいえプライバシーの問題だからだ。
ただこの先リヴァイと生きていくにあたって、マリウスを想い涙を流して敬礼をしたあの日のことを知られているのなら、ある程度は話しておきたい。
二人のためにも、マリウスのためにも。
「私とマリウスのあいだには、約束も誓いも何もありませんでした。マリウスが生きていれば違っていたかもしれないけど、マリウスは逝ってしまった。いなくなってから気づいたこと、知ったことがあります…」
そこで黙ってしまったマヤを、リヴァイが優しくフォローする。
「あぁ、わかっている」
マリウスはマヤを好きだった。そしてその想いを成就できずに散った。
「いつも見守ってくれていたマリウス…。憲兵団に行けたのに、私のために調査兵団に入団しました…。そんなマリウスに報告したいんです」
「……報告?」
「はい。マリウスは私への手紙に “幸せになれ” と書いていました。だから…」
いつでも思い浮かべることができる。
マリウスの家で読んだマリウスからの手紙。長年にわたる想いが綴られたあとに、最後にこう書いてあった。
“お前を一生守ってくれる…、オレより強いやつと幸せになれよ”