第27章 翔ぶ
ふわりと翔んだ次の瞬間には、がっしりとした引き締まった筋肉の腕に抱かれた。
マヤが飛びこんできても、リヴァイはびくともしない。
ひしと腕の中のマヤを抱きしめて、思わず漏れるリヴァイの低い声。
「絶対に離さねぇ…」
「兵長…」
しばらく抱かれていたが、リヴァイの力の限りにぎゅうっと抱きしめられていたマヤは苦しくなってくる。
「あの兵長、痛いです…」
「すまねぇ」
やっと手に入れたマヤを、心のままに抱きしめていたリヴァイは、照れくさそうに力をゆるめた。
「嬉しくてついな…」
その言葉に思わずマヤが顔を上げると、目を細めているリヴァイの顔がすぐそこにある。
恥ずかしくて、嬉しくて。まだこれが現実なのかも信じられなくて。
「兵長、あの…、さっきの… 本当ですか? 私を好きだって…」
「あぁ…」
「信じられなかったです…。想っているのは私の方なのにって…」
「なら俺だってそうだ。想う気持ちは俺の方が強ぇからな」
「私の方ですよ…?」
「いや俺だろ」
そうささやき合いながら、絡む視線はどこまでも熱くて。
「ふふ、じゃあ… おあいこってことにしませんか?」
「あぁ、そうしよう」
まだ抱き合っている二人を照らす、夕陽のやわらかい光。
「兵長、もう一つだけ訊いてもいいですか…?」
「あぁ、この際なんでも訊け」
「……いつから… ですか?」
「……そうだな…」
リヴァイは一瞬、躊躇した。
自分ではマヤを意識した瞬間は完全にわかっている。この丘で、マリウスを想って泣いていたマヤを見たあのときからだ。
……だが、隠れて見ていたなんて言えるかよ…。
いや、好きで隠れて見ていた訳じゃねぇが。
「………?」
“そうだな“ とひとこと答えたきり、眉間に皺を寄せて何やら考えこんでいるリヴァイを、“どうしたの” といった邪気のない顔で見上げてくるマヤ。
……クッ。
こんなつぶらな信じきった瞳に嘘なんかつけないじゃねぇか。