第27章 翔ぶ
「………!」
息ができない。
……お前の居場所は俺の隣って? 命に代えてもお前を守る…?
それってどういう意味なの…?
「あの、それは一体どういう…。調査兵の仲間として… ですか…?」
「違ぇよ。俺の女になれと言っている」
「えっ!」
「……急な話で悪ぃとは思うが、俺はお前を好いている。だからレイモンド卿とは、いや… 誰とも結婚なんかするんじゃねぇ。俺のそばにいろ。俺が必ずお前を守るから…!」
……兵長が私を好き…?
まだ事態を把握できずに混乱しているマヤに向かって、
「マヤ、お前も俺と生きていこうと思うなら…」
リヴァイは大きく両腕を広げて叫んだ。
「翔べ! 受け止めてやる、お前のすべてを!」
「………!」
……翔べって、ここから?
10メートル以上はあるわ。そんな… 無理よ…。
でも、でも…。
恋焦がれている想い人が、腕を広げて待っている。
好きだ、他の男と結婚するな、俺のそばにいろ、すべてを受け止めると言って待っている。
……これは夢かしら?
そうかもしれない。レイさんに嫁ぐ前に、神様が私にプレゼントしてくれた都合の良い夢。
「あはっ、そっか…。夢を見てるんだわ、私…」
つぶやいたマヤの言葉に対して、リヴァイの超絶に不機嫌な声が飛んできた。
「馬鹿か! 夢なんかじゃねぇ! お前に俺とともに生きる気があるのなら…、さっさと翔べ!」
……夢じゃないわ!
確かに木の下で愛おしいリヴァイ兵長が腕を広げている。
「……兵長とともに生きる…」
そうよ、私の想い人はただひとり。
これまでも、この先も、リヴァイ兵長以外にはいないのだから。
……今ここで自分の気持ちに素直になって翔ばなきゃ、いつ翔ぶのよ!
「兵長…!」
マヤは樫の木の枝から身を起こした。
「マヤ、来い!」
その瞬間マヤは翔び、リヴァイの胸に飛びこんだ。